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水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 [日本の作家 さ行]

水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪
佐藤友哉
講談社文庫


水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)

水没ピアノ 鏡創士がひきもどす犯罪 (講談社文庫)

  • 作者: 佐藤 友哉
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/04/15
  • メディア: 文庫



<裏表紙あらすじ>
工場で働く単調な日々に鬱々とするヒキコモリ気味の少年。少女を見えない悪意から護り続ける少年。密室状況の屋敷内で繰り広げられる惨殺劇。別々に進行する三つの物語を貫くものは、世界を反転させる衝撃の一文と、どこまでも深い“愛”である。なぜピアノは沈んだのか?著者渾身の戦慄純愛ミステリー。

第21回メフィスト賞受賞作の「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人」 (講談社文庫) 「エナメルを塗った魂の比重<鏡稜子ときせかえ密室」 (講談社文庫) に続く、鏡家サーガ第3作。
作者の最高傑作、と評されることの多い作品です。

3つのストーリーが交互に語られていきます。
携帯電話のバッテリーのシール貼り(!)が仕事の18歳。メル友の女子高生とのやりとりだけが楽しみ。
研究機関により脳を壊された長女に監視下に置かれつつ、彼女が壊される原因を作ったとして、母親が殺されたのを皮切りに、贖罪のため殺されるのを待つ一家の次男。
同級生の伽耶子を傷つけるものから守ろうと苦闘する小学四年生。

当然、ミステリを読みなれている読者は、これがどうつながるのかな、と考えながら読み進むわけですが、加えて、第一章が「僕は被害者なんです」で、第八章(終章のひとつ前。終章にはタイトルなし)が「僕は加害者なんです」という構図で、その前の第七章が「回答があたえられ、認識は逆転を起こす」ということですから、被害者と加害者の逆転という仕掛けも想像しつつ、となります。
3つの話のつながり方は、手が込んでいるので楽しめますが、もう少し手がかりというか、ヒントをあからさまな形で出しておいてよかったのではないかと思います。ざっと読み返してみても、むしろ、ちょっとアンフェアな気がしてしまいます。
また被害者と加害者の逆転というのも、「逆転」というのとちょっと違うのではないかなぁ、と。
ただし、「逆転」という言葉、字面を引き摺らずに考えると、本書のテーマのひとつであるでしょうし、3つのストーリーの絡み方もこのテーマにふさわしいものだと思われますし、よくできた小説だなぁ、と感心しました。
佐藤友哉ならではの世界観とか登場人物の壊れ具合に抵抗がある人もいるかとは思いますが、テーマ、ストーリー、文体の一体感を味わえる小説だと思います。
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