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幽霊の2/3 [海外の作家 ヘレン・マクロイ]

幽霊の2/3
ヘレン・マクロイ
創元推理文庫

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

幽霊の2/3 (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/08/30
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
出版社社長の邸宅で開かれたパーティーで、人気作家エイモス・コットルが、余興のゲーム“幽霊の2/3”の最中に毒物を飲んで絶命してしまう。招待客の一人、精神科医のベイジル・ウィリング博士が、関係者から事情を聞いてまわると、次々に意外な事実が明らかになる。作家を取りまく錯綜した人間関係にひそむ謎と、毒殺事件の真相は?名のみ語り継がれてきた傑作が新訳で登場。

暗い鏡の中に」がひさしぶりに復刊(出版社が変わっていても復刊ですよね?)されたので、積読だったこの作品を取りだしてきて読みました。「殺す者と殺される者」も買ってあります。ちなみに、「ひとりで歩く女」と「家蠅とカナリア」は読んでいます。
解説でも触れられていますが、まず、タイトルがいいですよね。なんだろうな、と思わせてくれる。
あらすじでも判りますが、室内ゲームの名前です。解説から引きますと、「クイズの答えを間違えるごとにプレイヤーが幽霊の三分の一、三分の二になっていき、三回間違えると(つまり三分の三になると脱落する)、というゲームである」。作中でこのゲームが出てきたとき、がっかりしました。この途中で殺人が起こるし、タイトルにしてもおかしくはないのですが、わくわくして読みだしたのに、ゲームそのものもたいした内容ではありませんし、雰囲気ありそうな名前なのでタイトルにした、たったそれだけのこと? と思ったからです。でも、ご安心ください。きちんと作品の内容に即したタイトルであることがわかります。
作家、出版をあつかっているので、内幕というか内輪話も楽しめます。「現在ではプロットはミステリ小説以外の場では無作法と見なされ、そのジャンルは保守的な作家にとって最後の砦になっています。」(P174)とか「ミステリ小説は本のうちに入らんよ」「あんなものは誰にでも書ける。大工や配管工と似たり寄ったりの仕事だ。わたしは前々からミステリ作家に印税を払う必要はないと言ってきた。大工や配管工だって印税はもわらんだろう。ミステリ作家にはいくばくかの原稿料を渡し、二次使用権から発生する金は版元が受け取るべきだと思っている」(P201) とか。本書の締めの一言も、スパイシーでおもしろかったです。
殺人のトリックは、ミステリとして古典的なもので、今となっては意外感に欠ける心配はありますが、そこに力点のある作品ではありませんし、タイトルも内輪話も事件の真相にきちんと結びついていて、ミステリ以外では無作法らしいですが(笑)、プロットの勝利ではないかと。真相に先に思い当っても、十分楽しく読めます。
派手さはないですが、ミステリらしいミステリとして、古典の風格です。
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