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魔性の馬 [海外の作家 た行]

魔性の馬
ジョセフィン・テイ
小学館

魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)

魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)

  • 作者: ジョセフィン テイ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


<表紙そでのあらすじ>
「あんた、あいつに瓜二つだ」飲んだくれの役者ロディングがロンドンの街頭で出逢った孤児のファラー。彼はロディングが彼の親戚アシュビー家の行方不明の長男パトリックと間違えたほど、そっくりだった。金に困っていたロディングは、彼を説得して家督相続者である行方不明の兄が戻ってきたという触れ込みで、アシュビー家に彼を送り込んだが…。『時の娘』で世界的な評価を受けた実力派女流作家が、それに先だって発表した異色作。物語の面白さを満喫させる、意外性とサスペンスに満ちたミステリ・ロマン。

文庫ではなく、単行本です。
時の娘」で高名なジョセフィン・テイの作品です。「時の娘」は、ベッド・ディテクティブの古典で、名作中の名作として名高いですが、ずいぶん昔に読んで、あまりぴんと来なかった記憶です。やはり、リチャード三世という題材にあまりになじみがないことがいけなかったのでしょう。
「魔性の馬」は打って変わって読みやすく、おもしろかったです。「時の娘」に挫折した人や、つまらないと思った人にもどうぞ。ジャンルとしては本格ミステリではなく、サスペンスかと思いますが、あらすじの「ミステリ・ロマン」というのがぴったりです。
原題は、Brat Farrar。主人公の名前です。この主人公が、田舎の名家の遺産相続人になりすまそうとする話です。主人公ファラーは、悪人タイプに造型されておらず、読者は感情移入してしまいます。ここがこの作品の最大のポイントかと思います。一方のアシュビー家の人々も、見事にいい人ばかりで、疑いは残っていても、なんとか主人公を信じようとします。ファラーと視点が交互にとられているのが非常に効果的で、醸しだされる緊張感が読みどころ。
途中から、パトリック失踪の真相を探る、という展開になり、倒叙ものっぽく"犯人"ファラーの視点だった物語は、"探偵"ファラーの物語に切り替わります。これもまた楽しい。
とはいっても、本格ミステリのようなギミックがあるわけではなく、非常にあっさりしたものですが、真相をアシュビー家の人たちに明かしてしまうと、自分が偽者であることがばれてしまうというジレンマが物語としては効果的です。
そして迎えるラスト、大団円とでもいえそうな落着で、ちょっと強引だなぁ、とも感じますが、そこはそれ、まさに「ミステリ・ロマン」、ウェルメイドなイギリス作品です。
アマゾンでみると品切れのようですが、どこか文庫で出さないでしょうか? 十分いま読んでもおもしろい良い作品だと思います。

蛇足もいいところですが、作者の名前、テイではなく、ティだと思い込んでいました。恥ずかしい。スペルを見ると、Tey...


<2018.1修正>
カテゴリーが、ずっと日本の作家になっていました。
もちろん、海外の作家です。修正しました。

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