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デッドライン [日本の作家 た行]


デッドライン〈上〉 (角川文庫)デッドライン〈下〉 (角川文庫)デッドライン〈下〉 (角川文庫)
  • 作者: 建倉 圭介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第二次世界大戦末期、欧州戦線から米本国に帰還した日系二世のミノルは、世界発のコンピューター、「エニアック」の開発に参加する中、日本への原爆投下が間近であることを突き止める。母国にいる家族を守るため、一刻も早く「降伏」を促さなければならない。ミノルは、酒場で出会った日系人の踊り子エリイと共に、日本への密航を企てる。すべてを投げ捨て、アメリカ大陸を北に向かう二人。壮大な逃避行がはじまる――。<上巻>
原爆投下計画の漏洩を察知した米政府は、ミノルとエリイの日本上陸を阻むべく、追跡チームを送り込む。アンカレッジの攻防、アリューシャン列島での銃撃戦……たび重なる危機を脱し、二人は日本への密入国に成功する。だが、そこで待ち受けていたのはさらなる試練と困難だった。原爆投下へ刻々と迫るタイムリミット。窮地に追い込まれたミノルは、最後の賭けに出る―圧倒的スケールと緊迫感で疾走する冒険小説の大傑作。 <下巻>

「このミステリーがすごい! 2007年版」第10位。
「クラッカー」 (カドカワ・エンタテインメント)で第17回横溝正史賞佳作を取ってデビューした建倉圭介による冒険小説です。「クラッカー」 がなぜか文庫化されていないので読めていませんが、こちらは「このミス」効果か文庫化されました。「クラッカー」 も文庫化してくれないかな。
あらすじにもあるとおり、大戦秘話、でして、佐々木譲の「エトロフ発緊急電」 (新潮文庫)とちょっと似ています。
アメリカを舞台に、日系人が生き辛い時代からはじまります。苦難の中、欧州戦線にも参戦したことのあるミノルがコンピューターの開発にかかわって、熱中していくくだり、とても興味深く読みました。
今のわれわれの知識からすれば原爆がらみであることが明瞭でも、当時だとそうはいかず、徐々に真実に近づいていくところにも引き込まれました。
ロス・アラモス近くサンタフェの酒場で働いていたエリイが持っている情報とあわせて、いよいよ日本への潜入行(と言うのでしょうか?)となります。外見が目立つ日系人男女が、どうやってアメリカから日本までたどりつくか。米軍が派遣する追跡チームにも日系人がいるのがインパクトあり、です。
タイトルにも謳われているように、原爆投下を回避したい、という目的のタイムリミット・サスペンスであって、逃げられるのか?、に加えて、間に合うのか? とはらはらします。もうひとつ、ソ連の対日参戦というリミットも読者は知っているので、いっそうどきどきです。
上巻の終わりのほうからなので、たっぷり1冊は費やされているのですが、もっともっと読みたかったですね。あまり長い小説は好まないのですが、この作品の場合は後半もう少し長くてよいと思います。
戦争の愚かさに加えて、人種差別もテーマとなっていますが、アメリカでの差別に加えて、日本が行った差別も取り上げられており、しかもそれがプロットと結びついてところは見事だと思います。
冒険小説の収穫のひとつ、といえると思うのですが、品切れのようで残念です。
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