模倣密室 黒星警部と七つの密室 [日本の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
白岡と春日部で、猿が人を襲う事件が連続した。そんな中、一組の男女が密室の中で発見される。女性は後頭部を殴られて重体、男は軽傷だったため、狂言との見方が強まる。しかし、密室マニアの黒星警部が葉山虹子と駆けつけて、事件は二転三転することに……(表題作)。
小躍りしながら密室に向かう黒星警部。数々の名作が走馬灯のように駆けめぐる作品集。
デビュー作「五つの棺」 (文庫化されたときには、2編追加されて「七つの棺―密室殺人が多すぎる」 (創元推理文庫)に続く密室ミステリ作品集です。
黒星警部のキャラクター設定が好きではないので-作者が狙っている笑いが肌に合わないんです-、その分全体としての評価は低くなってしまうのですが、それでも、密室をめぐる部分は、さすがというか、堂に入っているというか、よく考えられていると思いました。
なかには、よくこんなアイデアを作品に仕上げたなあ、と思えるようなばかばかしいものもありますが、密室トリックで勝負する作品もあれば、密室トリックが捨て駒になっていて別の趣向がめぐらされている作品もあり。古今の作品のパロディになっているのもこの作品集の特徴ですが、こちらも、パロディが表面に強く出ているのもあれば、隠し味的なものもあり。密室、パロディともに、かなりバリエーション豊かな作品集となっています。
だいたい、出尽くしたといわれている密室トリックのこと、どれだけバラエティに腐心しても、やっぱりパターン化を免れない....そんな中で、トリックそのものをパロディにするというのも、パターン化批判を回避するひとつの行き方だなあ、と思いました。
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