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サクリファイス [日本の作家 近藤史恵]


サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた! 大藪春彦賞受賞作。

あらすじにもある通り、大藪春彦賞受賞作で、第五回本屋大賞第2位。
2007年週刊文春ミステリーベスト10は第5位、「このミステリーがすごい! 2008年版」 第7位です。
これだけの勲章揃いで、この後シリーズ化されてもいるので、質が高いことはわかってはいたものの、近藤史恵さんのこれまでの作品のイメージとはあまりにも違うので、とまどいながらも期待して読みましたが、期待以上です。すごい。
マイナーな(競技者やファンの皆様すみません)スポーツである自転車ロードレースが、すっと頭に入ってきます。特に主人公の役割であるアシストの位置づけ(解説から引けば、「自分の勝利は求めない、たとえ自分の順位はさげても、よしんばリタイアすることになっても、エースの勝利のために尽力する」)が非常に印象的で、こういうスポーツって、珍しいのではないでしょうか? 個人競技と団体競技がミックスしたような。ちょっと実際の競技をテレビでいいから見てみたくなりました。
このことに関連もするのですが、主人公の性格設定がいいなと思いました。このあたりは近藤さんらしいところかな、と。青年がスポーツや事件を通して成長していく、という青春小説としての側面にぴったりです。
事件らしい事件がないのですが、チームのエース石尾に関連して過去になにかあったことがほのめかされます。「石尾さんは怖い人だ」「石尾は自分以外のエースを認めない」...
レース中心のストーリーは、やはりレースで転換を迎えます。
あらすじにもある「ヨーロッパ遠征中の悲劇」を以って、ミステリとしての構造が立ち上がってきます。このミステリとしてのスイッチの入り方が無理なくスムーズで素晴らしいと思いました。過去の石尾をめぐる事件も明かされます。自転車ロードレースのありようと不可分な真相で、それまでのレースシーンも、それだけで十分楽しめるものですが、真相を理解するのに必要なパートとしてきちんと役割を担っていて、ミステリ好きとしては非常にうれしい。
真相の苛烈さにはひるみますし、そんなに狙い通りうまくいくかな? と思うところもあるのですが、 ミステリとしては十分だと思いましたし、主人公の成長を決定づけるエピソードとして鮮烈に響きますので、ミステリ、スポーツ小説、青春小説の融合がとてもうまくいった作品だとおすすめします。
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