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もう誘拐なんてしない [日本の作家 東川篤哉]

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/09
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ二人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!? いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。

「謎解きはディナーのあとで」(小学館)で大ブレークした東川篤哉の作品です。
東川篤哉は、ユーモアミステリで知られていますが、あらすじにも書いてある通り、ユーモアというよりはコメディといったほうが近いかもしれません。ユーモアミステリといっても、たとえば赤川次郎や天藤真のようなものではなく、もっとあからさまな、ベタな笑いを特徴にしています。ギャグという用語が似つかわしいかも。
笑いというのは好みがそれぞれ分かれるので難しいと思うのですが、東川篤哉の笑いは、ちょっと泥臭い感じがして手放しで喜んで読むわけにはいきません。
一方で、その笑いのなかで、トリッキーな作風を展開しているので、ミステリファンとしては見逃せない。もうちょっとさらりとした、さわやかな笑いに移ってもらえるとこちらの好みにはぴったりくるのですが。
その意味では、傾向として、折原一の黒星警部シリーズに近いのかもしれませんね。
さて、この作品は誘拐もの。扱っているのは狂言誘拐。
誘拐ものには名作・傑作がひしめきあっていますが、この作品は誘拐を背景にして、本格ミステリを展開してみせたところが新しいのではないかと思います。
もちろん、関門海峡を舞台にしたからこその身代金受け渡しトリックなど、誘拐ものの勘所はきちんとおさえられていますが、正直、そのトリックそのものはローカル色豊かでよいと思うものの、想定の範囲内というか、あまり意外性はありません。でも、それはおそらくわざとというか、作者の計算で、本格ミステリの設計図をちゃんと引いて作品が作られているところが最大の長所ではなかろうかと思います。
東川さんには一度、ギャグの要素を抑えた作品を書いてみてほしいところです。
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コメント 4

macaron

セーラー服と組長の娘といえばどこかで聞いたような(笑)
東川さんの作品は気になってるんですけどまだ読んだことが
ないので是非読んでみたいです。
by macaron (2012-05-06 07:02) 

31

macaronさん、コメントありがとうございます。
まったく「セーラー服と機関銃」は思い出しませんでした;;
むずかしい(と思っています)ユーモアミステリに挑んでいる東川さんは、好みは違えどがんばってほしいです。


by 31 (2012-05-06 22:27) 

のりたま

こんにちは。
東川さんの本は本屋さんで何度か手に取ってはみるのですがついつい後回し?になり読んだことがありません。
気になるのですが・・・。
今度読んでみたいと思います。
by のりたま (2012-05-07 18:07) 

31

のりたまさん、ご訪問&コメントありがとうございます。
東川さんの作品は、ある意味癖のある作風なので、どれから読んだらいいか、というのは難しいところですが、広く受け入れられた「謎解きはディナーのあとで」が早く文庫化されるといいなぁ、と思っています。
by 31 (2012-05-07 21:16) 

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