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ワイルド・ソウル [日本の作家 か行]

ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

ワイルド・ソウル〈上〉
ワイルド・ソウル〈下〉 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 垣根 涼介
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
一九六一年、衛藤一家は希望を胸にアマゾンへ渡った。しかし、彼らがその大地に降り立った時、夢にまで見た楽園はどこにもなかった。戦後最大級の愚政<棄民政策>。その四十数年後、三人の男が東京にいた。衛藤の息子ケイ、松尾、山本――彼らの周到な計画は、テレビ局記者の貴子をも巻き込み、歴史の闇に葬られた過去の扉をこじ開けようとする。<上巻>
呪われた過去と訣別するため、ケイたち三人は日本国政府に宣戦布告する。外務省襲撃、元官僚の誘拐劇、そして警察との息詰まる頭脳戦。ケイに翻弄され、葛藤する貴子だったが、やがては事件に毅然と対峙していく。未曾有の犯罪計画の末に、彼らがそれぞれ手にしたものとは――? 史上初の三賞受賞を果たし、各紙誌の絶賛を浴びた不朽の名作。 <下巻>

「午前三時のルースター」 (文春文庫)で今はなきサントリー・ミステリー大賞を受賞してデビューした垣根涼介の第3作。
あらすじにある史上初の三賞というのは、日本推理作家協会賞、大藪春彦賞、吉川英治新人文学賞の3つです。
ちなみに、「このミステリーがすごい! 〈2004年版〉」第10位です。
<棄民政策>というものの名前は知っていましたが、戦後だったのですね。知らないというのは恐ろしいことです。反省しました。
第1章で、その悲惨としかいいようのない棄民政策の実態が描かれ、第2章からは一転して現代の日本が舞台となります。
復讐譚なわけですが、なかなかその全貌が明らかになりません。事件が実際に起こるのは、なんと下巻になってから。でも、ちっとも退屈しません。
まず特筆すべきは、キャラクターの魅力でしょう。ケイ、松尾、山本に加え、日本で生まれ育ったテレビ局記者の貴子と主要な4人いずれもが、それぞれに特徴を持って、いきいきと迫ってきます。なかでも、ケイと貴子ですね。この二人の恋模様(?)なんて、燃え上がったり、はらはらしたり、しんみりしたり、怒ったり... ラテンな感じ、といったらちょっと紋切り型の受け止め方かな? でもそんな感じです。ラテンなケイに振り回されていくうちに、貴子が成長していくのも読み進む楽しみです。
復讐のやり方も、そんなキャラクターに基づいたもので、よく練られているように思いました--もっとも、ミステリ的に練られているのではなく、物語としてよく練られている、というものですが、この話だとやっぱりこうだ、と納得できる優れものだと思います。
エンターテイメントの雄編としておすすめします。

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