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ジョーカー・ゲーム [日本の作家 柳広司]

ジョーカー・ゲーム

ジョーカー・ゲーム

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/08/29
  • メディア: 単行本

<裏表紙側帯あらすじ>
結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人および自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」--結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。
東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。

すでに文庫化されていますが、単行本で読みました。シリーズも、このあと、「ダブル・ジョーカー」 (角川文庫)「パラダイス・ロスト」(角川書店)と快調に書き継がれています。
表側の帯には「驚異のW受賞」とあります。吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞しています。
「このミステリーがすごい! 2009年版」第2位、2008年週刊文春ミステリーベスト10 第3位です。ちなみに、スパイ・ミステリーながら、「2009 本格ミステリベスト10」 では第12位になっていますから、本格ミステリ好きにもアピールする作品であることがおわかりいただけると思います。
このことがこの作品の大きなポイントです。スパイなんだけど、本格でもいける。もともとスパイは駆け引きとか騙し合いをするものなのでミステリとも親和性が高いところに、仕掛けを重点にすれば本格ミステリにも近くなるわけです。なので、スパイ・ミステリでも、動よりは静、知的ゲームという趣です。
ゲーム性を高めているので、太平洋戦争開戦前夜 (だと思うのです。D機関の設立準備室ができたのが昭和十二年秋。第4話「魔都」は支那事変後とあるので、日中戦争は始まっていますが) という時代背景も (少なくとも第1作のこの作品では) あくまで舞台、装飾にすぎません。D機関も、マンガチックというか、あまりにも現実離れしている設定です。訓練生(?)もみーんな超人的。なので、重苦しさは感じられません。
こういったフレームを設定し、大小さまざまな仕掛けをちりばめて、スタイリッシュな物語を紡いでいる、というのが本質かと思います。
これが、とってもおもしろい。本物の(というのは変な表現ですが)戦争小説やスパイ小説が好きな人には物足りないかもしれませんが、ミステリ好きには十分です。断固支持!
第1話で表題作でもある「ジョーカー・ゲーム」はその象徴でしょう。日本家屋での証拠さがし、というオープニングでわかる通り、ポーの「盗まれた手紙」をやっているのです! わくわくしませんか? 現実的には簡単に見つかってしまうであろうこの隠し場所(?)、ミステリ的にはOKです。
D機関の創始者で「魔王」と呼ばれる結城中佐の凄味がどんどん高まってきているので、続編にも当然期待します!

ところで、D機関、といったら、西村京太郎の「D機関情報」 (講談社文庫)を思い出してしまいます...どこかでつながるとおもしろいのですが...

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