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退出ゲーム [日本の作家 初野晴]


退出ゲーム (角川文庫)

退出ゲーム (角川文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/07/24
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
「わたしはこんな三角関係をぜったいに認めない」――穂村チカ、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。上条ハルタ、チカの幼なじみのホルン奏者。音楽教師・草壁先生の指導のもと、吹奏楽の“甲子園”普門館を夢見る2人に、難題がふりかかる。化学部から盗まれた劇薬の行方、六面全部が白いルービックキューブの謎、演劇部との即興劇(フリーエチュード)対決……。2人の推理が冴える、青春ミステリの決定版、“ハルチカ”シリーズ第1弾。

主人公ふたりが、ハルタとチカで、ハルチカ・シリーズらしいです。
どうでもいいことですが、新宿西口の小田急ハルクの地下のことを、ハルチカっていうんですね。この前近くを通りかかったら、看板にそう書いてあって、ちょっとびっくりしてしまいました。
さて、おやじギャグ以下のレベルの余談はさておき...
4編をおさめた短編集です。
表題作「退出ゲーム」は2008年(第61回)日本推理作家協会賞短編部門の候補作に選ばれた秀作です。高校を舞台にした作品らしく、演劇部の仕掛けた劇中での対決、という設定で、頭脳ゲームとしてよく作られていると思いますが、個人的には不満あり。こういう舞台や劇など、架空であることを前提としたお芝居やゲームを扱うと、どうも上滑りになってしまって、せっかくの対決も色あせるように感じてしまいます。そのせいか、真相の切実さと物語のトーンがずれているような印象を受けました。
と否定的な意見を述べましたが、でも、この作品がこのシリーズの特徴をよくあらわしているかもしれません。
このシリーズは、登場人物も、話の進み方も、青春ミステリで、学園ミステリで、タイプとしては日常の謎、になると思われるのですが、ぽーんと日常からかけ離れたところに連れて行ってくれたりするのです。つまり、舞台設定とはずれた地点に到達してみせることが持ち味なのかも。
ずいぶん遠くへ連れて行ってくれるやり方が、「鮮やか」「切れ味するどく」とは言い切れないのがたまにキズですが--表題作への不満もこのせいだと思われます--、狙いはなかなかよいと思います。謎が解けた時の落差が、ちゃんとミステリです。ずらし方、に気を配ってもらえれば、いっそう素敵なシリーズになると思います。

ハルタのキャラクターが、単に目新しい設定にした、というだけではなくて、ストーリーにもっともっと密接にかかわってくるとさらにいいのではないかと思うのですが...
「初恋ソムリエ」 (角川文庫)
「空想オルガン」 (角川文庫)、そして
「千年ジュリエット」 (角川書店)
とシリーズは順調に進んでいますので、弱小クラブ(?)の吹奏楽部の行く末ともども、そのあたりも気にしながら読み進めていきたいです。

<蛇足>
この文庫の目次のページ、なんだかバランスが悪くて気になるのですが...
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