片耳うさぎ [日本の作家 大崎梢]
<裏表紙あらすじ>
小学六年生の奈都は、父の実家で暮らすことになった。とんでもなく大きくて古い屋敷に両親と離れて。気むずかしい祖父に口うるさい大伯母。しかも「片耳うさぎ」をめぐる不吉な言い伝えがあるらしいのだ。頼りの中学三年生さゆりは、隠し階段に隠し部屋と聞いて、張り切るばかり――二人の少女の冒険が“お屋敷ミステリー”に、さわやかな新風を吹き込む。
「配達あかずきん ― 成風堂書店事件メモ」 (創元推理文庫)や「平台がおまちかね」 (創元推理文庫)などの大崎梢の作品です。
上記二つのシリーズが本屋をめぐる「日常の謎」で、ミステリとして見た場合あまりにも謎が小さいことに不満を述べてきましたが、この作品はシリーズを離れたおかげか、これまでの作品よりもぐーんとミステリらしさが漂っています。
舞台が田舎のお屋敷。ときたらやっぱり横溝正史を連想してしまいますが、主人公を小学生にしたところがポイントなのでしょう。
大人が見たらなんでもないことも、子供から見たら怖いこと、不思議なことだったりするので、古いお屋敷がワンダーランド(お化け屋敷!?)と化すのも自然な成り行きかもしれません。主人公奈都と一緒に屋敷を探検するさゆりという人物を設定したのも、この流れに沿ったものと言えます。
ここを作者は強く訴えたかったのか、この作品は非常に導入部分が長く、ちょっとストーリーがもたついた印象があるので残念です。一方で、解決近くなるとあまりにも駆け足になって、物語のバランスが崩れてしまっているようです。(あと、作者のせいではありませんが、上に引用したあらすじは不正確です。奈都は両親と離れて暮らすことになったのではなく、作品の期間中両親が家を留守にしているだけです)
ミステリとしてみると...隠し部屋だ、屋根裏部屋だ、大家族の秘密、因縁だ、古い言い伝えそして過去の事件だ、と盛りだくさんで、やはり横溝正史の世界ですが、からりとした感覚なのが新しいですね。
真相は、まあ他愛もないもので、特段感心するところはありませんが、いつもよりもミステリへ踏み出してきた作者の姿勢には拍手を送っておきたいです。
もう1冊、「ねずみ石」 (光文社文庫)という作品が、この「片耳うさぎ」と同じ傾向の作品のようですね。さらにミステリ寄りになっていることを期待することにしましょう。
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