SSブログ

紳士と月夜の晒し台 [海外の作家 は行]


紳士と月夜の晒し台 (創元推理文庫)

紳士と月夜の晒し台 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョージェット・ヘイヤー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/05/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
月夜の晩、ロンドンから離れた村の広場で、晒し台に両足を突っ込んだ紳士の刺殺体が発見された。動機を持つ者にはこと欠かないが、浮世離れした容疑者たちを前に、ハナサイド警視は苦戦する。そんなとき、思わぬ事態が発生して……。ヒストリカル・ロマンスの大家として知られる一方、セイヤーズも認めた力量を持つ著者による、巧みな人物描写と緻密なプロットの傑作本格ミステリ。


作者は、ヒストリカル・ロマンスの大家らしいです。ヒストリカル・ロマンスって何? と思いましたが、リージェンシー・ロマンスのことをそう言うんでしょうか? なんて大くくりな呼び方...イギリスのリージェンシー(摂政時代:1811年~1820年)を中心とした時代に限定される雰囲気が、ヒストリカルというだけではあまりにも広すぎないでしょうか?
さておき、他ジャンルで確固たる地位を築いている作家の書いたミステリ、というわけで、ちょっとおっかなびっくり読みました。
「セイヤーズも認めた」とあらすじに書いてありますが、ミステリとしての手腕を評価したのでしょうか? 帯にセイヤーズのコメントが引用されていて、それは「ヘイヤー女史の生み出す人物たちの会話は、常に変わらぬ愉しみを与えてくれる……これほど文句なしに惚れこめる人々にはまずお目にかかれない。」というもので、セイヤーズの評価はミステリ部分に焦点が当たっていないのではないだろうか、という気がしてなりません。
本書を読んで最も印象に残るのは、なにより登場人物たちのキャラクターです。まさに「惚れこめる人々」。こういう“狂騒”ともいうべき振る舞い、言動をする人は、ちょっと日本人にはいませんが、外国だったらいそうな気がして、特に金持ち連中にはきっといるんじゃないかな、なんて、思ったりもします。「陽気な容疑者たち」 (創元推理文庫)といえば、天藤真の長編のタイトルですが、本書にもぴったりです-念のため、作風は全く違いますので-。
ミステリとして見た場合、特にあらすじに書かれているように本格ミステリを念頭に置くと、ちょっと物足りない感じはしますが、それでも、特徴あるキャラクター設定の中に、巧妙に真犯人が隠されていて、不満はちっとも感じません。
次作、「マシューズ家の毒」 (創元推理文庫)も楽しみです。


<2020.10.27追記>
この作品、「本格ミステリ・ベスト10〈2012〉」第7位でした。

nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0