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ボクら星屑のダンス [日本の作家 さ行]


ボクら星屑のダンス (角川文庫)

ボクら星屑のダンス (角川文庫)

  • 作者: 佐倉 淳一
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
借金で浜名湖に入水しようとしていた浅井久平は、同じく自殺を図る不思議な子どもヒカリと出会った。ヒカリは最先端科学センターから逃げ出してきた天才だという。半身半疑ながらも一緒に逃避行を始めた久平。一方、内閣官房から指令を受けた警察はヒカリの捜索を開始。だが、ヒカリはネットを駆使して逆にみずから誘拐を装い、100億円を要求した。果たしてヒカリたちは現金を奪取し、偽装誘拐を完遂できるのか?

第30回横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作です。
誘拐ミステリで、あらすじに書いてあるのですが、身代金が100億円!、というと、どうしても天藤真の「大誘拐」 (創元推理文庫) を連想してしまいます。あちらはあまたある誘拐ミステリのなかでも屈指の傑作ですから、挑戦した心意気やよし、というところでしょうか。
ユーモアある誘拐ミステリというと、人質に振り回される誘拐犯というのが定番(?)ですが、この作品は、確かに天才的な子供という人質主導の狂言誘拐の一種でありながら、周りの誘拐犯(?)たちも相応に頑張ってみせるところがポイントだと思います。このだめっぽいけど、一所懸命やってみる誘拐犯たちが、人質も含めて、いい感じです。
ミステリ的なアイデアもあれこれと盛り込まれています。身代金の金額の決め方(ネタバレにならないように曖昧な書き方をします)も、人質が無事であることを確認させるやり方も、そして肝心要の身代金奪取の方法も、なかなか愉快です。特に、身代金奪取の方法は、基本的なアイデアには先例があると思うのですが(ちょっと作例がぱっと思い浮かばず恐縮です)、現代的な仕掛けと結びついて効果的に演出されていて感心しました。
詰めのあまいところがあったり、天才児であることによりかかった部分があったりと(難しそうなことも、あの子は天才だからこれくらいできるんだ、として処理されると、ちょっとね...)、全体として、やはり「大誘拐」にはかないませんが、ここまで楽しめれば十二分だと思いました。
また、誘拐事件を通すことで、「宇宙なんて、三次元の膜に張り付くゴミのようなものだし、解明するほどの謎もない。……だいたい人間が大切にしているものに、価値があるものなんか、一つもないんだから」(P22) とか、「つまり、ボクらはゴミなんだよ。宇宙では小さすぎて、勘定にも入らない」(P47) とか言って、自分には価値なんかないと思っている天才児の再生の物語になっていて、タイトルの星屑のダンスのシーンは、その象徴的事象で、ちょっと感動的です。映像化したら楽しそうでもあり、テレビ東京賞にも納得。
突っ込みたいところはあるものの、愛すべき作品といえるのではないでしょうか。
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まっきー☆

浜松出身の?作家さんらしいので、近所の本屋では山積みとなっています・・・。 ドラマ化もあっか、本当にたくさん見ましたよ、この本。 ワタシは天邪鬼なので(苦笑)、なんとなく手に取る気がしませんでしたが、いつか一度は読んでみようと思います。
by まっきー☆ (2012-11-30 21:21) 

31

まっきー☆さん、いつもありがとうございます。
お気に召したら、手に取ってみてください。
この作品の舞台も浜松が中心です。知ってる場所が出てくると、楽しいですよね。
by 31 (2012-11-30 23:41) 

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