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暗い鏡の中に [海外の作家 ヘレン・マクロイ]


暗い鏡の中に (創元推理文庫)

暗い鏡の中に (創元推理文庫)

  • 作者: ヘレン・マクロイ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/06/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ブレアトン女子学院に勤めて五週間の女性教師フォスティーナは、突然理由も告げられずに解雇される。彼女への仕打ちに憤慨した同僚ギゼラと、その恋人の精神科医ウィリング博士が調査して明らかになった“原因”は、想像を絶するものだった。博士は困惑しながらも謎の解明に挑むが、その矢先に学院で死者が出てしまう……。幻のように美しく不可解な謎をはらむ、著者の最高傑作。

一時期復刊が相次いだヘレン・マクロイの作品の中でも、大物中の大物、傑作中の傑作の復刊です。出版社を、ハヤカワから東京創元社に移しての新訳・復刊です。東京創元社、偉い! そんな待望の復刊だったのに、長らく積読にしてしまいました。ごめんなさい、マクロイさん。ようやく読めました。
この作品は、短編「鏡もて見るごとく」の長編化作品で、短編のほうは、あちこちのアンソロジーにも収録されている傑作なので、何度か読んだことがあります。
短編を読んだことのある人でも大丈夫。長編化で、凄味が加わっています。
この凄味を評価する意見が多く、まったくその通りとその意見には同感なのですが、ベースとなる部分、謎の中心である、引用した裏表紙のあらすじでは、“原因”とぼかして書かれているある事象が、合理主義者のウィリング博士の手によって、きわめて合理的に解決されるところも大きなみどころだと思います。
その手掛かりが、きわめて大胆に読者の目の前に提示されている点も高く評価したいですね。その手掛かりで、いかにも不可思議な現象がするすると解けてしまう醍醐味はミステリならではなのではないでしょうか?
そして、長編化で加わった凄味で、この作品が妖しい光を放つのです。
同趣向は、ディクスン・カーの“あれ”が先駆的なものだと思います。ディクスン・カーの“あれ”も大好きな作品です。そういえば、“あれ”も最近復刊されましたね(笑)。
ほかにも何人もの作家が挑んでいますが、日本人でも高木彬光に作例がありますし、最近では今邑彩が得意としている印象です。
この趣向は、うまく嵌ったときには本当に絶大な威力を発揮して作品を輝かせてくれるものだと思います。ただ、その光は、まばゆい太陽の光の明るさではなく、磨き抜かれた黒木の輝きというか、黒石の輝きというか、あるいは暗がりに灯るランプの明かりというか、そういうどこか翳りを潜めたところが、一層魅力的ですね。
ヘレン・マクロイの実力を堪能できる、復刊されてまことに喜ばしい傑作だと思います。
ヘレン・マクロイのほかの作品も読みたいです。どこか翻訳してください。
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