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芝浜謎噺 [日本の作家 愛川晶]


芝浜謎噺 (神田紅梅亭寄席物帳) (創元推理文庫)

芝浜謎噺 (神田紅梅亭寄席物帳) (創元推理文庫)

  • 作者: 愛川 晶
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/05/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
かつての弟弟子が、故郷で初めての独演会を開くにあたり、福の助に『芝浜』の稽古をつけてほしいと泣きついてきた。ついに高座にかけずに終わった大家もいるほど口演が難しい人情噺に、二つ目の彼がこだわるのには深い事情があった。若手でも演じることのできる改作は果たしてできるのか? 落語を演じて謎を解く! 表題作を含む傑作三編を収録した、本格落語ミステリ第二弾。

「道具屋殺人事件 (神田紅梅亭寄席物帳)」 (創元推理文庫)に続く第2弾です。前作の感想はこちら
落語そのものが謎になる、というシリーズ、今回も好調です、と言いたいところなのですが、うーん、不満ありです。全体としてはよかったんですけどね。
第1話「野ざらし死体遺棄事件」は、落語を演じるとはどういうことか、というのを中心に据えて、現実の事件の謎解きも同じように解けるという、シリーズらしい堂々たる風格の作品、なわけですが、福の助が最後に導き出す落語についての結論が、どうもすっきりしません。
何より、「一人で何役も演じるのは、何も落語ばかりじゃない。演劇の世界だって、ざらにある。その人物になりきって演技をする点では、まるで同じだと僕は思うがね。」(P49)という敵役のせりふがまったく宙に浮いてしまっています。うーん。演劇における一人何役というのと、落語の複数役とは違うということをもう少し丁寧に説明してもよかったのではないかと思います。
そして出される結論も、本当にそれでいいの? という感じがします。なんだか、投げ出したみたい。
そのあと、第2話「芝浜謎噺」では、「芝浜」の演じ方がテーマになります。こちらは、納得の結論がきちんと導き出されるのですが、そうなると第1話を振り返って、やっぱり第1話の結論が大きな不満を生みます。
で、この本を貫くテーマとなっている、弟弟子の「芝浜」が披露される第3話「試酒試(ためしざけだめし)」となります。難しい「芝浜」をどうやって若手が演じるか、演じさせるか、演じられるように改作するか、というのが中心テーマなはずなのですが、うーん、結局、どうしてうまく演じられたのか、さっぱりわかりません。みんなの協力があったから、なんて根性論ではないでしょうし。これは、ミステリとしてはどうもいただけないように感じます。
と、延々不満を述べたのですが、それでこの本おもしろかったか、と訊かれると、おもしろかったです。
全体の話の流れがとてもいいのです。馬春師匠もかっこいいし、師匠-弟子、弟子-弟子の関係が、すごーくうらやましくなります。演じるサイドの落語家をめぐるドラマが十分おもしろいです。
謎解き、という部分に不満を感じたものの、シリーズとしては〇で、このシリーズを続けて読んでいきたいです。



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