おさがしの本は [日本の作家 門井慶喜]
<裏表紙あらすじ>
和久山隆彦の職場は図書館のレファレンス・カウンター。利用者の依頼で本を探し出すのが仕事だ。だが、行政や利用者への不満から、無力感に苛まれる日々を送っていた。ある日、財政難による図書館廃止が噂され、和久山の心に仕事への情熱が再びわき上がってくる……。様々な本を探索するうちに、その豊かな世界に改めて気づいた青年が再生していく連作短編集。
このところ流行のビブリオ・ミステリです。
「天才たちの値段―美術探偵・神永美有」 (文春文庫)の門井慶喜がこういう作品を書くとはねー。
図書館を舞台にした日常の謎、です。と同時に、図書館廃止をたくらむ勢力(?)との闘いというストーリーが展開されていく、連作集。
読者がいっしょに謎を解く(探している本をつきとめる)という楽しみは味わえませんが、意外性のある着地を見せてくれるので楽しめます。
第1話目の「図書館ではお静かに」の冒頭、
「シンリン太郎について調べたいんですけど」
というせりふにニヤリとした人、いっぱいいると思います。割とよくあるミスですから。森鴎外の本名、森林太郎をシンリンタロウと読んだのか、と。
でも、そこから思いもかけないところへ作者は連れて行ってくれます。うーん、知らなかった。
そんなのあり!? という感想を抱く人もいるかもしれませんが、楽しかったですね。こういう調子で作者の繰り出す意外な本を素直に楽しめばよい作品集だと思います。
第3話の、外来語の輸入の歴史なんていう謎かけの目指すところが簡単にわかってしまっても、差し出される本は結構意外感あるのではないかと。
本にまつわるパートは、かくのごとく、ニヤニヤしながら楽しく読めてよいのですが、図書館廃止をめぐる部分はちょっといただけませんね。正直、好みにあいませんでした。主人公の成長物語として組み込んだのだろうとは思うのですが、中途半端というか、きっちり消化されていないように感じました。
門井慶喜には期待するところ大なので、こちらがハードルを上げてしまっているせいもあるとは思いますが、もう一工夫お願いしたかったです。
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