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ジーン・ワルツ [日本の作家 海堂尊]


ジーン・ワルツ (新潮文庫)

ジーン・ワルツ (新潮文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/06/29
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
帝華大学医学部の曾根崎理恵助教は、顕微鏡下体外受精のエキスパート。彼女の上司である清川吾郎准教授もその才を認めていた。理恵は、大学での研究のほか、閉院間近のマリアクリニックで五人の妊婦を診ている。年齢も境遇も異なる女たちは、それぞれに深刻な事情を抱えていた――。生命の意味と尊厳、そして代理母出産という人類最大の難問に挑む、新世紀の医学エンターテインメント。

この作品では、不妊治療、代理母など産婦人科をめぐる問題が取り扱われています。いくつもの症例を盛り込んで、薄い本の中にも盛りだくさん。役所(厚労省)批判や学会批判まで取り上げるのですから、かなり忙しい本になっています。
タイトルの意味は冒頭の序章で明かされます。
「親から子へ伝えられる遺伝子はDNA配列で、それは、アミノ酸の製造法を記載した秘儀書だ。暗号のベースとなるアルファベットは、A、T、G、Cの四文字。その塩基の三つの組み合わせが一種類のアミノ酸を指定する。
 つまり、生命の基本ビートは三拍子、ワルツなのだ。」
「この世界は、絶対にゼロとイチの二進法ではできていない。
だって生命の世界では、誰の遺伝子も、みんなワルツを踊っているのだから。」
主人公である理恵のモノローグであるこの序章があることで、ラストの展開の予想がつきやすくなっています。
いろいろな問題を、読みやすく提供し、エンターテイメントとしても楽しめる作品に仕上げる。とても難しいハードルを海堂尊はいつも通り軽々とクリアして見せますが、産婦人科医療をめぐる問題というテーマが非常に深淵なものであるだけに、異論の出る余地は多そうな仕上がりになっています。
何より気になるのは、やはり主人公理恵の行動でしょうか。
産婦人科で働き、不妊治療を手掛けているのだから、産む喜び、苦しみ、生まれてこないつらさ、生んでしまった悩みを、いちばん近くで見てきているはずで、そういう立場の人間がとる行動として、さて、どうなのでしょうか? このあたりは女性のご意見を聞いてみたいところですが、違和感がありました。男性が主人公だったら、所詮は産まない性であるだけに、気にならなかったかもしれませんが。もっとも、女性のご意見といっても、それぞれの立場、事情によって見解がことなるかもしれません。それくらい難しい問題を採り上げているので、問題提起することを目的だとすると、異論が出るような仕上がりが逆に一番よいのかもしれませんね。

舞台となるマリア・クリニックの院長の息子が、「極北クレイマー」 (上)(下) (朝日文庫) (ブログへのリンクはこちら)に登場する三枝久広医師(逮捕される役どころです)、という設定です。こういう海堂ワールドのつながりは愛読者には楽しい仕掛けですね。

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