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保健室の先生は迷探偵!? [日本の作家 さ行]


保健室の先生は迷探偵!? (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

保健室の先生は迷探偵!? (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 篠原 昌裕
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/08/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
私立高校・山瀬学園で悪質ないたずら事件が発生する。女性教師の惨殺死体を描いた油絵が、廊下に飾られたのだ。校長からの特命で、養護教諭の茂木遙は美術教師の椎名巧とともに、「殺人画」を描いた犯人を捜すことになる。遙はやる気のない椎名に辟易しながらも、極秘に調査を続けるが、やがて第2の「殺人画」が飾られ、事件は思わぬ展開をたどる。犯人は生徒なのか!? 犯行の真の動機とは??。

昨日感想をアップした、「Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件」に続いて、「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉です。
タイトルからもわかる通り、学園ミステリです。
保健室の先生っていうのは、学園ミステリの探偵役としてふさわしい存在だと思います。主要科目の先生と違い、授業の時間に縛られにくいし、担任も持たないので自由に動き回りやすいですから。それでいて先生=大人なので、客観的に事件をとらえるのにもうってつけ。「名探偵保健室のオバさん」(集英社文庫―コミック版)とかいうタイトルのマンガもありましたね。
この作品のおもしろいところは、迷探偵、とありますが、わりとリラックスムードが漂いやすい保健室の先生を、熱血漢 (女性なので「漢」ではないかな) に設定したところでしょうか。このミスマッチ感とその結果の暑苦しさがポイント高い。実際にこういう保健室の先生がいたら、いやかもしれませんが(笑)。
そして、それに配する名探偵(?)が美術教師。偏屈というかマイペースというか、いかにも美術教師(というと、世間の美術の先生に失礼ですけど...)。
この2人の組み合わせが非常にいいです。
事件の方は、殺人ではなく、教師の惨殺死体を描いた油絵が学校で飾られる、というもの。絵の中で殺す、というわけですが、ミステリとしておもしろい狙いどころだと思いました。高校を舞台に人がどんどん死んでいくよりずっと現実的ですね。また動機の点からも納得感あります。
特に、真っ先に疑われる美術部の生徒について、画風、タッチから全員否定し(なにしろ探偵が美術教師ですから、そのあたりの目は確かなわけですね)、同時に、素人がおいそれと描けるレベルではない、と犯人探しの要素を狭めてしまう手腕に感心しました。
事件の動機、狙い、そして犯人探しのやり方、そして読者への目くらまし、とトータルでバランスよく配置されていることがわかります。飛び抜けたところ、尖ったところはありませんが、その分無理なく世界が構築されていますし、遥と椎名のやり取りや関係も解説で福井健太さんが「エンタテイメントの王道」と指摘されているように、安心して浸っていられると思います。
賞を逃した隠し玉ですが、十分楽しみました。
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