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猫間地獄のわらべ歌 [日本の作家 は行]


猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)

猫間地獄のわらべ歌 (講談社文庫)

  • 作者: 幡 大介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/07/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
江戸の下屋敷におわす藩主の愛妾和泉ノ方。閉ざされた書物蔵で御広敷番が絶命した。不祥事をおそれ和泉ノ方は“密室破り”を我らに命じる。一方、利権を握る銀山奉行の横暴に手を焼く国許では、ぶきみなわらべ歌どおりに殺しが続くと囁かれ!? 大胆不敵なミステリ時代小説、ここに誕生! <文庫書下ろし>

なんともまあ、 思い切った時代小説が現れたものですねぇ。
冒頭、開始早々の35ページに
「い、今、密室と仰せになられましたか?」
「申したが、それがどうした」
「密室……などという言葉は、この時代には、なかったのではないかと推察いたしまするが」
「左様であろうな」
「そういうことにうるさい読者が結構いるんですけど……」
なんというやりとりが出てきて、メタ趣向が前面に押し出されたあたりで、おやっ?と思うのですが、その後も次々と、時代小説にしては型破りな展開を見せます。
ミステリではよくある趣向を、時代ミステリの形を借りて、時代小説に導入しただけ、という解説の仕方も可能だとは思いますが、いえいえ、「~だけ」というアイデアを実際に形にするのは大変なはずで、まずはここまでの作品を仕立てた作者に盛大な拍手を贈りたいです。
自殺を他殺と見せかけねばならぬためでっちあげる密室トリックも、国許でおこるわらべ歌の見立て殺人も、江戸でおこる殺人事件も、相応にトリックやプロットが練られていて、メタ趣向なしでも十分通用する時代ミステリになったと思うのですが、メタ趣向が華を添えるというか、ミステリ好きには楽しみなプラスアルファがあります。
たとえばP259以下の、わらべ歌の見立て殺人とその真相をめぐるやりとりは、爆笑ものであると同時に、ミステリの趣向に関する考察だったりもして、笑い飛ばしながらも、ひきつけられてしまいます。
273ページに挿入される「読者への挑戦状」も、ひねったというか、おふざけの効いたもので、そのあと披露されるラストの展開も、伏線は引いてあるし、見え見えといえば見え見えなのに、ついうっかり引っかかってしまいました。
ということで、非常に癖のある作品ですが、そのおかげで一層興味深い作品とも言え、読めてよかった、と感謝します。幡さん、またミステリ書いてくださいね。

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