迷走パズル [海外の作家 パトリック・クェンティン]
<裏表紙あらすじ>
アルコール依存症の治療もそろそろ終盤という頃、妙な声を聞いて恐慌をきたしたピーター。だが幻聴ではなく療養所内で続いている変事の一端とわかった。所長は言う―ここの評判にも関わる、患者同士なら話しやすいだろうから退院に向けたリハビリを兼ねて様子を探ってもらいたい。かくして所長肝煎りのアマチュア探偵誕生となったが……。パズルシリーズ第一作、初の書籍化。
「2013本格ミステリ・ベスト10」 第4位です。
ちなみに、この年は、パトリック・クェンティンの当たり年(?) で、同ベスト10では、1位が「巡礼者パズル」 (論創海外ミステリ)で、6位が「俳優パズル」 (創元推理文庫)でした。
原書は1936年。
解説によると1959年に「癲狂院殺人事件」として<別冊宝石>に訳されたっきりだったようで、東京創元社偉い! よく刊行してくれました。
古い作品だと愉しめないかというと全然そんなことはなく、快調に読めます。
この「迷走パズル」 (創元推理文庫)の場合、古いことはかえってプラスかも知れません。というのも、あらすじでもおわかりかもしれませんが、舞台が精神病の療養所。
今、この舞台でミステリを書いたら、非常に重苦しい作品になってしまうような気がしますし、そもそもポリティカル・コレクトネスとか言って、舞台にすること自体アウトとされるような可能性もあります。
でも、この作品は、カラッとしています。これは大きな特長でしょう。
ミステリ的な仕掛けも周到でした。
細かなトリックがいろいろと盛り込まれていて、それがミス・ディレクションにもなっている。
大技のトリックはありませんが、小ざっぱりした小粋なミステリ、といった趣です。
ピーターのアマチュア探偵ぶりも、見事といえば見事で、終盤さらりとクラーク刑事が活躍するのも、なんだかしゃれています。
そもそも所長がピーターに探偵を頼んだ理由もふるっています。
そして、帯に
「療養所内で続発する変事
解決すれば恋人もついてくる」
とあるように、ピーターとアイリスとのロマンスまで!
短いのに、盛りだくさん。
満足しました。
創元推理文庫でこの後出たシリーズも買い込んでいるので、本当に楽しみです。
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