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失楽の街 [日本の作家 篠田真由美]


失楽の街 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

失楽の街 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/08/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
四月一日のW大講堂前を皮切りに開始された連続爆破事件。ハンドル・ネーム《火刑法廷》の犯行予告はなにを語る。故郷を捨ててさまよう少年、過去を引きずる男女、我が子を亡くした父。魂の置き場を喪失したものたちが、巨大都市・東京で交錯する時、その救済は何処に。建築探偵シリーズ第二部、堂々の完結。


番外編を除くと建築探偵シリーズ第10作にしてシリーズ第二部のラスト、らしいのですが、第一部と第二部の違いもそんなに意識せずにこれまでこのシリーズを読んできてしまったので、そのあたりはよくわかりませんが、そういうことわからなくてもおもしろかったです...
今回は神代教授が結構活躍します。
今となっては、このシリーズのスピンオフ作品、「風信子の家 神代教授の日常と謎」 (カドカワ・エンタテインメント)「桜の園   神代教授の日常と謎」 (カドカワ・エンタテインメント)が出版されているので驚きませんが、シリーズをノベルス版でリアルタイムに追いかけてきた人はびっくりしたでしょうね。
京介、蒼、深春たちじゃなく、神代教授が主役に近い役どころで出てくるとは...
本作は、メインが神代教授でなくてはならない、と思わせてくれる仕立てになっていて感心しました。

今回の舞台(?) いや、テーマ (?) は、作中では朋潤会と名前が変えてありますが、同潤会アパート。
作者があとがきで作品の狙いを解説していてそれ以上付け加えることはないのですが...
「ひとつの建築ではなく東京という街をテーマにしてみたいと思うようになった」
とみなが貴和の「EDGE」シリーズに発想の契機があるとも書いてあって、なるほど、と思いました。
シリーズ第1作の「EDGE」 (講談社文庫)を読んでいます。最初に出版されたのが、講談社のホワイトハート文庫だったのでジュヴナイルですが(なので、かなり軽いタッチですが)、篠田真由美がいうとおり「東京をモチーフに犯罪という補助線を引いた優れた都市小説」だったように記憶しています。

この作品のもう一つの特徴は、犯人側に視点を置いたパートがあること。名探偵を主軸に据えたシリーズで、犯人側の視点が導入されることって、倒叙もののシリーズを除けば、珍しい。
これは、おそらくテーマを東京という街に据えて、都市小説であろうとした作者の狙いがもたらしたものだと思います。
このパート、シリーズものとして期待するところとはずれているとは思うのですが、意外と楽しいのです。
このパートがあることによって引き起こされるサプライズはさほど効果をあげていない、というかちょっと不発に終わっていますが、テーマに寄り添う犯人の動機を浮かび上がらせることには成功していると思うので、ミステリとしての切れ味はなくてもいいのでしょう。
この作品も「東京をモチーフに犯罪という補助線を引いた優れた都市小説」ということかと思います。

次の「胡蝶の鏡」 (講談社文庫)からいよいよ第三部でシリーズも終盤。期待して読み進んでいきたいです。


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