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謎解きはディナーのあとで [日本の作家 東川篤哉]


謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)

謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/10/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
国立署の新米刑事、宝生麗子は世界的に有名な『宝生グループ』のお嬢様。『風祭モータース』の御曹司である風祭警部の下で、数々の事件に奮闘中だ。
大豪邸に帰ると、地味なパンツスーツからドレスに着替えてディナーを楽しむ麗子だが、難解な事件にぶちあたるたびに、その一部始終を相談する相手は“執事兼運転手”の影山。「お嬢様の目は節穴でございますか?」――暴言すれすれの毒舌で麗子の推理力のなさを指摘しつつも、影山は鮮やかに事件の謎を解き明かしていく。二〇一一年ベストセラー一位のミステリ、待望の文庫化。書き下ろしショートショート『宝生家の異常な愛情』収録。


この作品から、3月に読んだ本です。
大ベストセラーですね。今頃読みました。
2011年本屋大賞第1位です。
ちなみに、2010年週刊文春ミステリーベスト10 第10位。
櫻井翔、北川景子のキャスティングでドラマ、映画にもなっています。

ドラマのおかげで、探偵役である執事の影山のキャラクターは広く知られていますね。
主人であるはずのお嬢様、麗子に対する暴言(?) がポイントの連作です。
六話収録されているのですが、決め台詞のない作品もあるのですねぇ。水戸黄門の印籠みたいに、必ず出てくる方がいいと思うんですが...
さておき、決め台詞を各短編から抜き出してみます。

「失礼ながらお嬢様--この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」
「失礼ながらお嬢様」「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」
「失礼ながらお嬢様」「こんな簡単なこともお判りにならないなんて、それでもお嬢様はプロの刑事でございますか。正直、ズブの素人よりレベルが低くていらっしゃいます」
「失礼ながらお嬢様、やはりしばらくの間、引っ込んでいてくださいますか」

戯画化した設定のユーモア・ミステリなので、目くじらを立てるのもどうかとは思いますが、この影山のせりふ、正直ひっかかりました。
日本語としておかしくないでしょうか?
標準語の語彙にはない「アホ」を使っている、とか、侮蔑するような表現に敬語はふさわしくない、というのをおいておくとしても、お嬢様のことを指して「ございますか」ということはない。
慇懃無礼な執事、という設定なら、日本語はあくまで清く美しいものを使ってこそ、だと思います。たとえば、ジーヴスのように(英語の翻訳ですけど)...

以前「もう誘拐なんてしない」 (文春文庫)の感想にも書きましたが(ブログへのリンクはこちら)、デビュー作「密室の鍵貸します」 (光文社文庫)から一貫して、泥臭い、ベタな笑いを持ち味にされているので、言っても詮無いことかもしれませんが、ギャグが狙いにしてもねぇ。

ミステリとしての側面に目を向けると、大ネタはなくても、各話それぞれ、ちょっとした思い付きが盛り込まれています。
もっとも「ちょっとした」思い付きですから、ギャグ満載の設定にあわせたミステリの難易度、と捉えるか、あるいは、ミステリの難度が高くないことをギャグで誤魔化している、と捉えるか読者の意見が分かれるところかもしれません。安楽椅子探偵ものとしては、まずは基本のポイントを押さえたレベルにはなっていると思います。
ただ、物足りないのも事実で、好評につき続編が次々と書かれているようですが、安楽椅子探偵ものらしく論理のアクロバットを見せてくれることを期待します。




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