聖女の救済 [日本の作家 東野圭吾]
<裏表紙あらすじ>
資産家の男が自宅で毒殺された。毒物混入方法は不明、男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に魅かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが……。驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作!
世間で大評判の、そして売れて売れて仕方のない(?) ガリレオシリーズです。
2008年週刊文春ミステリーベスト10 第5位、「本格ミステリベスト10 2009」第4位です。
「容疑者Xの献身」 (文春文庫)とはまた違った意味で、この「聖女の救済」 もトリックが議論になるのでしょうね。
トリックが作品の中心となって出来上がっている作品です。
「あれほど合理性のない、矛盾に満ちたトリックを考えつくんだから」
とラストで湯川に言わせていますが、確かに強烈なトリックですね。
正直、どうなんでしょうか。最後に明かされるトリックを読んで、怒り出す読者、結構いるのではないかと思います。
怒るまではいかなくても、無理だ、とか、現実味がない、とか、成立しない、とか、そういう感想を抱く人多いのではないでしょうか。
東野圭吾ほど売れていると、普段ミステリを読みつけない人も読むでしょうから、余計心配です。
文庫についている帯の惹句が印象的です。
「ガリレオが迎えた新たな敵、それは女。」
「おそらく君たちは負ける。僕も勝てない。これは完全犯罪だ」
しかし、なによりすごいのは、犯人じゃなく、それを明かしたガリレオでもなく、やはり東野圭吾だと思います。
こんなトリック、思いついても作品にはしませんよ! きっと普通の作家なら。
作者は無理を承知で、あちこち相当配慮した書き方や構成をしているのがわかります。
一方でこのトリック、いくら無理でも、ミステリ魂をくすぐるというか、ミステリファンに訴えかけてくるものがあります。
「そんなの無茶だよ」と思うよりも先に、「うーん、そう来たか! 」とか「ああ! そういうひっくり返し方があったんだ」とか、そういう感想を抱いてしまいそう。
そして、それを一編の長編に仕立てあげた作者に敬意を表するというか...
毒殺トリックの幅を広げた意欲作、として支持したいです。
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