熱帯夜 [日本の作家 さ行]
<裏表紙あらすじ>
猛署日が続く8月の夜、ボクたちは凶悪なヤクザ2人に監禁されている。友人の藤堂は、妻の美鈴とボクを人質にして金策に走った。2時間後のタイムリミットまでに藤堂は戻ってくるのか? ボクは愛する美鈴を守れるのか!? スリリングな展開、そして全読者の予想を覆す衝撃のラスト。新鋭の才気がほとばしる、ミステリとホラーが融合した奇跡の傑作。日本推理作家協会賞短編部門を受賞した表題作を含む3篇を収録。
ここから4月に読んだ本の感想です。
「熱帯夜」
「あげくの果て」
「最後の言い訳」
の3話収録の短編集で、レーベルはホラー文庫ですが、ホラーという感触はあまりありません。
表題作は、あらすじにも書いてあるとおり、日本推理作家協会賞受賞作です。
「走れメロス」 (新潮文庫)かよ、と言いたくなるような設定ながら、それともうひとつ、轢き逃げしようとする「ワタシ」の視点のエピソードが交互につづられていって、なんだか楽しめそうな予感。前作「鼻」 (角川ホラー文庫)も、2つのエピソードを手際よく融合させていましたしね。
さすが協会賞の受賞作だけあって、作者の技巧を十分楽しめる作品ですが、選考委員が「底意地が悪い」という作者の視点が目を惹きます。
「あげくの果て」は、単行本のときはこちらが表題作だったそうです。高齢化社会のいきついた形が描かれます。馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばすこともできるような設定ですが(それに合わせたかのようなふざけたネーミングも作中取り入れられていますが)、ラストのひんやりした感触は妙に後を引きます。
この作品も、複数視点が効果的に使われています。
「最後の言い訳」はゾンビものなんですが、こちらは市役所の苦情処理係となった今と、子供の頃の回想シーンが交互につづられていきます。
タイトルになっている「言い訳」が作品のポイントとなるわけですが、妙に説得力というか納得感があって、怖いのに笑ってしまうというか、それでいてなんとなく空恐ろしくもなるような、えもいわれぬ読後感です。
ゾンビって、こういう扱い方もできるんだなぁ、と強く感銘を受けました(大げさ?)。
曽根圭介、いいですね。
この後の作品も読んでいきたいです。
2014-05-05 18:29
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