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堂場警部補の挑戦 [日本の作家 蒼井上鷹]


堂場警部補の挑戦 (創元推理文庫)

堂場警部補の挑戦 (創元推理文庫)

  • 作者: 蒼井 上鷹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/02/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
玄関のチャイムが鳴った時、まだ死体は寝袋に入れられ寝室の床の上に横たわっていた。液晶画面を見ると、緑色のジャージを着た若い男が映っていた。「おはようございます、ドーバです。電話でパントマイムのレッスンをお願いしていた――」招かれざる客の闖入により、すべてがややこしい方向へ転がり始める「堂場刑事の多難な休日」など、当代一のへそ曲がり作家による力作四編。


この作品から5月に読んだ本の感想となります。

「堂場警部補の挑戦」 というタイトルを見たときには刑事ものにはよくあるタイトルなのでなんとも思わなかったのですが、目次をみると
第一話 堂場警部補とこぼれたミルク
第二話 堂場巡査部長最大の事件
第三話 堂場刑事の多難な休日
第四話 堂場IV/切実
の四話収録。
第四話は、ジョイス・ポーターの「切断」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)が元ネタですね。文庫タイトルは「切断」だけですが、もとは「ドーヴァーIV/切断」だったと思います。
とすると、「〇〇警部(刑事)の××」というタイトルは類例が多すぎてどれとはいえませんが、たとえば創元推理文庫らしくいくと、F・W・クロフツの「フレンチ警部最大の事件」 (創元推理文庫)とか「フレンチ警部の多忙な休暇」 (創元推理文庫)とかが連想できます。
「堂場警部補とこぼれたミルク」というのは、わかりませんでした。

で、順に眺めると、堂場さんの資格が、話が進むにつれて下になっていっている!!
警部補→巡査部長→刑事→挙句、呼び捨て(無階級)です。降格!? あるいは時間をさかのぼって行っている?
ひねくれた発想の多い蒼井上鷹のこと何か仕掛けてるんだろうなぁ、と期待でわくわく。
で、第一話の「堂場警部補とこぼれたミルク」を読むとびっくりすると思います。
この作品、日本推理作家協会賞の候補作にもなっていまして、捻りに捻ったというか、もう、こねくり回した、としか言えないような高粘度のストーリーが楽しめます。
でもね、刑事の名前をタイトルにした作品と思って読むと、あれ? そういう話? とあっけにとられると思います。
この後の第二話が心配に。
でも、心配無用、というか、心配通り、というか。
第二話以降も、蒼井上鷹らしさ炸裂の、まさにこねくり回した作品群をお楽しみいただけます。
第四話のラスト2行なんて、現実にはあり得ないというか、もしそうであっても実際にはラスト2行は公表されないと思うんですが、無理を承知の捻りを象徴していますね。

そんなわけで、凝りに凝ったプロットを堪能できましたが、あまりすっきり感がなかったですね。
これは蒼井作品によく感じることです。でも、やり過ぎ感漂う作風は貴重なので、今後もぜひこの路線でお願いしたいです。


タグ:蒼井上鷹
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