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リカーシブル [日本の作家 や行]


リカーシブル

リカーシブル

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/01/22
  • メディア: 単行本


<裏表紙側帯あらすじ>
この町はどこかおかしい
父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る――。
血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて地方都市のミステリーに迫る!


この「リカーシブル」から6月に読んだ本の感想となります。
単行本です。
「このミステリーがすごい! 2014年版」 第7位、「2014本格ミステリ・ベスト10」 第10位。

このブログを始めて2年以上たちますが、米澤穂信を採り上げるのは初めてです。なんだか意外でした。
表側の帯に
「45万部 青春の痛ましさを描いた名作ボトルネックの感動ふたたび」
「2年ぶり待望のミステリー長編」
と書かれています。
米澤穂信といえば、「氷菓」 (角川文庫) から始まる古典部シリーズや「春期限定いちごタルト事件」 (創元推理文庫) から始まる小市民シリーズが有名でどちらのシリーズもファンなのですが、個人的に今のところ最高傑作は「ボトルネック」 (新潮文庫)ではないかと思っています。
その「ボトルネック」 を思わせるタイトルで、帯もそういう煽り。米澤穂信は文庫化されれば必ず買っているのですが、これは期待値高く、単行本で購入。
半年ほど積読にしてしまいましたが、期待が高まった状態で読みました。

「リカーシブル」という語は表紙に RECURSI-BLE と書かれています。この語英和辞典を引いても載っていません。リカーシブ(recursive)を捻った米澤穂信の造語のようですね。ちなみに、リカーシブは冒頭に掲げられていますが「(形容詞)再帰的な。自分自身に戻ってくるような。プログラミング言語においては、処理中に自らを呼ぶ出すような処理をいう」語です。
主人公であるハルカが中学1年生で、弟サトルは小学3年生。ちょっと二人とも設定が幼すぎるかなぁ、と思わないでもないですが、サトルが予知能力を発揮することを考えるとこのくらいの幼さが必須だったのかもしれません。
ハルカの立ち位置が、いきなり難しい状況です。
ハルカにとってママとサトルは血のつながらない家族。ママはお父さんの後妻でサトルはママの連れ後。で、お父さんが横領で逃亡。やむなくママの故郷へ。ママは優しいけれど(継子いじめのようなことはありません)、なにかと思うところの多い毎日。
この故郷坂牧市がかなりの田舎という設定で、伝説が色濃く残っている。そしてその坂牧での生活が始まると現れたサトルの予知能力。因習残る田舎の生活っていうのも、なかなか気疲れするものですよね、慣れないと。
「ボトルネック」 のことを考えると、ハルカにいったい何が降りかかってくるのだろうと、身構えて読んでしまいます。
非常に後味の悪い、実にいやーな結末を迎える点は「ボトルネック」 と同じといえると思いますが、個人的には衝撃度は「ボトルネック」 の方が上でした。先に読んだから、ということではなく、「ボトルネック」 の方は主人公自らが沈み込んでいくような辛さであるのに対し、この「リカーシブル」はまわりがもたらす辛さであるからだと思いました。言い換えると、自分が自分であることそのものの辛さと自分がここにいることの辛さの違い、でしょうか。
ネタバレにならないよう、詳しくは書けませんが、そういう意味でタイトルは象徴的だと感じました。「ボトルネック」 「リカーシブル」のタイトルがさすもの、状況の位置づけが大きく異なっているように思われます。
ということで、「ボトルネックの感動ふたたび」とはいきませんでしたが、きわめて設計図をきっちり引いて書かれた企みに満ちた小説で堪能できました。
また、こういう作品書いてください。


<2015年07月追記>
6月に文庫化されたので、書影を追加しておきます。
リカーシブル (新潮文庫)

リカーシブル (新潮文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 文庫


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コメント 2

藍色

読みにくかったのですが最後まで読めました。
主人公が辛い境遇のなかで、健気に生きていることには胸が詰まる思いでした。
読後感は良かったです。

トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
by 藍色 (2015-07-03 14:06) 

31

藍色さん、コメント&トラックバックありがとうございました。

by 31 (2015-07-06 21:37) 

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