龍神の雨 [日本の作家 道尾秀介]
<裏表紙あらすじ>
添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に合わせたから。――そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか? あなたの胸に永劫に刻まれるミステリ。大藪春彦賞受賞作。
週刊文春ミステリーベスト10 第8位、「このミステリーがすごい! 2010年版」 第9位。
今回は、複雑な家庭環境の兄妹・兄弟が2組登場。
辰也と圭介の兄弟は父親の後妻里江と父親の死後住んでいる。辰也は里江が母親を殺したのだと思い、里江に嫌がらせをする。返事をしない。会話をしない。本やお菓子を万引きしては、それをわざと里江の目につく場所に置いておく。うーん。中学生は複雑なお年ごろだし、こういう家庭環境は想像も及ばないので、どうこういう資格はないと自分で思いますが、ちょっとやり過ぎではないでしょうか。特に弟の圭介がわりと普通なのでなのさら。「母親を殺したのだと思い」と書きましたが、そういう証拠があるわけでもなく、むしろ無理にそう思い込もうとしている節がある。血のつながらない辰也と圭介を引き取り、育ててくれる里江って、客観的にはとてもいい人なんですよね。これはやはり心無い仕打ちという感じではないでしょうか。
一方の蓮と楓は再婚4ヶ月で母が死に、継父睦夫と暮らしている。会社も辞め、酒も増え、中学3年の楓をどうやら女として見ているようだ...睦夫を殺そう、と蓮は決意している。不穏ですね。
で、辰也と圭介が、蓮の働くコンビニ(?) で万引きをしようとしたことから、この2組の運命が交差します。
タイトルにもありますが、非常に雨が印象的な作品です。なんだかずーっと降っている感じ。
道尾秀介の本なので、このままでは終わらないというか、見かけどおりではないことが最後に明かされるわけですが、細かな事実の積み重ねでミス・リードしていく手法は見事ですねぇ。
それにしても、冒頭に圭介と蓮が見た龍、そして後半辰也と蓮が見た龍はなんだったんでしょうね??
橋本満輝さんの解説もおもしろかったですね。龍は龍のままでいいのかもしれません。
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