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名前探しの放課後 [日本の作家 た行]


名前探しの放課後(上) (講談社文庫)名前探しの放課後(下) (講談社文庫)名前探しの放課後(下) (講談社文庫)
  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/09/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
依田いつかが最初に感じた違和感は撤去されたはずの看板だった。「俺、もしかして過去に戻された?」 動揺する中で浮かぶ一つの記憶。いつかは高校のクラスメートの坂崎あすなに相談を持ちかける。「今から俺たちの同級生が自殺する。でもそれが誰なのか思い出せないんだ」二人はその「誰か」を探し始める。 <上巻>
坂崎あすなは、自殺してしまう「誰か」を依田いつかとともに探し続ける。ある日、あすなは自分の死亡記事を書き続ける河野という男子生徒に出会う。彼はクラスでいじめに遭っているらしい。見えない動機を抱える同級生。全員が容疑者だ。「俺がいた未来すごく暗かったんだ」 二人はXデーを回避できるのか。 <下巻>


過去に戻される、というギミックを前提として、自殺する同級生を探して自殺を食い止める。
こういう設定は、やはり学生生活を舞台にするのがふさわしいですね。
読んでいる途中、読者はなにやら違和感を覚えるというか、ひっかかるところを感じると思います。
作者は、丹念に、丹念に、人物紹介を重ねていきます。
なので、ミステリを読み慣れている方なら、真相はわりと簡単に見当がつくと思います。
でも、これが実にいい。
表面の物語も十分楽しめますし、上に書いた“真相”をベースにしても、高校生の気持ちは心地よい。
主人公のいつか、気に入りました。こんなに見た目もよくて、スポーツもできるやつ、あまりにも自分とかけ離れているのですが、なんとなく感情移入。

と、こう読み終わってもよい、十分楽しい作品だと思うのですが、作者はもう一つネタを抛り込んでいます。
ネタバレになると思うので、下の方↓に畳んでおきます。
ただ、「ぼくのメジャースプーン」(講談社文庫) を読んでいないとわからない内容なので、この名前探しの放課後(上) (下) を読む前に、「ぼくのメジャースプーン」 を読んでおいた方がよいと言っておきます。


<蛇足>
本書の章題、名作のタイトルが並べられています。
第一章 秘密の花園
第二章 裸の王様
第三章 オオカミ少年
第四章 エーミールと探偵たち
第五章 星の王子さま
第六章 みにくいあひるの子
第七章 白雪姫
第八章 失われた時を求めて
第九章 クリスマス・キャロル
第十章 青い鳥
そして最後
第十一章 石のスープ
この石のスープだけ、知りませんでした...


<ネタバレ注意>
エピローグで、秀人が
「まさかあれがかかってしまうとは思わなかった。最後に力を使ってから六年以上。」
と述懐します。
そして、椿のフルネームが明かされます。椿史緒。
ああ、「ぼくのメジャースプーン」
秀人は、「ぼくのメジャースプーン」 のぼくが成長した姿だったのか。
で、かくして、いつかが経験したタイムスリップは、タイムスリップではなく、秀人の“力“が引き起こしたもの、とわかります。
シリーズ物と銘打っていないのに、別の作品を読んでいないとわからない仕掛けというのはちょっと???という部分もありますが、この重層的な仕掛け、いいなと思いました。
なにより、この部分がわからないで読み終わった時でも、仕掛けをわかったうえで読み終わった時でも、いつかのあすなへの思いの強さがちゃんと浮かび上がってくるところがいいですね。
それに、あの力、こういう使い方もできるんだな、という感慨もわきました。


タグ:辻村深月
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