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ちみどろ砂絵 くらやみ砂絵 [日本の作家 た行]


ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉 (光文社時代小説文庫)

ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 都筑 道夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/10/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
江戸は神田の橋本町、貧乏長屋に住まう砂絵かきのセンセーを始めとしたおかしな面々が、わずかな礼金めあてに、奇妙奇天烈な謎を解く異色の捕物帳シリーズ!  四季折々の江戸の風物を織り込み、大胆かつ巧緻な構成で展開する探偵噺は、時代小説のみならず本格ミステリーファンをも夢中にした傑作揃い。その名作が装いも新たに、ボリューム満点の二冊合本で刊行。


この「なめくじ長屋」シリーズは、都筑道夫の高名な捕物帳です。
以前、角川文庫に収録されていましたが、その後光文社文庫に収録され、2010年に合本して全6巻にまとめたものの第1弾がこれです。
角川文庫版で「血みどろ砂絵」(角川文庫版では、“血”が漢字でした)も「くらやみ砂絵」も読んでいますが、本屋に並んでいるのを見て、すごく懐かしくなりました。
実は「小梅富士」を読み返してみたくて、たしか最初の巻に入っていたよな、と思ってこの「ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵 なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉」 (光文社時代小説文庫)を中身も確かめもせず買ったのですが、記憶違いで、「小梅富士」が入っているのは第3巻の「からくり砂絵」のようで、次の「からくり砂絵 あやかし砂絵」 (光文社時代小説文庫)を後日買いました。
ということで、せっかく買ったので予期せぬ再読となった「ちみどろ砂絵 くらやみ砂絵」 ですが、いやあ、やはりおもしろかったですね。

「ちみどろ砂絵」の方は
渡し舟での人間消失を扱う、第一席 よろいの渡し
女の着物を着た男の首なし死体を扱う、第二席 ろくろっ首
とある商家から風呂桶を盗み出してくれと言われる、第三席 春暁八幡鐘
番頭を切り付けた手代が倉から消えてしまう、第四席 三番倉
本所七不思議の見立て殺人、第五席 本所七不思議
博打のかたにとられた妾を旗本屋敷から取り返すよう頼まれる、第六席 いのしし屋敷
心中相手が店に来たときの姿と違い老婆に代わっていたという、第七席 心中不忍池

「くらやみ砂絵」は
父子がそれぞれ相手を呪い殺そうとする、第一席 不動坊火焔
通夜の席で客が刺殺され、もとの死体が消えてしまう、第二席 天狗起し
見世物小屋の女太夫の内腿に浮かび上がる殺人予告、第三席 やれ突けそれ突け
手妻師と砂絵のセンセーの対決から意外な方向へ話が転がる、第四席 南蛮大魔術
火の見櫓で半鐘が鳴ったが火事はなく、鳴らし手が殺された、第五席 雪もよい明神下
役者絵を付けた羽子板が切り裂かれ、その役者が殺されていく、第六席 春狂言役者づくし
質屋に入った盗人はその時点で既に死んでいたはずという、第七席 地口行灯
とそれぞれ7話収録です。

ミステリとして不可能興味も満載ですし、シリーズ物といってもワンパターンではなく、事件も、なめくじ長屋の連中の事件へのかかわり方もそれぞれ工夫が凝らされています。
たとえば、解説で都筑道夫自身のコメントを引いて触れられていますが、最後の「地口行灯」はダイイング・メッセージを取り扱っていますが、唖然とするくらい素晴らしいアイデアです。
各話短い中にも趣向盛りだくさん。
脱奴(ぬーど)、巣乱(すらむ)、蕃拉布(はんかちーふ)、書場簾(かんばす)、倶游夫(ぐるーぷ)、混凝土(こんくりいと)、娯知譜(ごしっぷ)、破落窟(ばらっく)などなど、地の文で見られる言葉遊びもやはり楽しいです。

さて、次は待望の(?)「小梅富士」収録の「からくり砂絵 あやかし砂絵」 です。
とはいえ積読という悪い癖のせいで、いつになることやら....


<おまけ>
211ページに
「とんでもございません」
というセリフが出てきます。
「とんでもない」で一語なので「とんでもございません」というのは間違いで、「とんでもないことでございます」というべき、と教えられてきましたが、都筑道夫ほどの作家がこう書くと、「とんでもございません」というのも間違いではなかったのか、と思えてしまいますね。


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