弁護士探偵物語 天使の分け前 [日本の作家 は行]
弁護士探偵物語 天使の分け前 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 作者: 法坂 一広
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2013/01/10
- メディア: 文庫
<裏表紙あらすじ>
第10回『このミス』大賞受賞作。「殺した記憶はない」と、母子殺害事件の容疑者・内尾は言った。裁判のあり方をめぐって司法と検察に異を唱えたことで、弁護士の「私」は懲戒処分を受ける。復帰後、事件の被害者・寅田が私の前に現れ、私は再び、違和感を抱えていた事件に挑むことに。その矢先、心神喪失として強制入院させられていた内尾が失踪。さらに周囲で不可解な殺人が起こり……。
この作者のお名前、“のりさか”ではなく、“ほうさか”なんですね。
第10回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。
上に引用したあらすじではわかりませんが、ジャンル的には、弁護士を主人公にしたハードボイルドになるでしょうか。
帯に「ウイット溢れる新感覚ハードボイルド!!」とありますが、「新感覚」ではありませんね。
特徴的なのは、非常に饒舌な減らず口(ワイズクラック)です。やや過剰ではあるものの、実は、個人的にはこういうの好みです。賛否分かれるというか、好き嫌いが分かれる作風ですけどね。
大賞1千2百万円の価値があるか、と聞かれると、この作品には目新しさが感じられないので、考え込んでしまいますが、過去の「このミステリーがすごい!」大賞のラインナップを見たら、これで十分ではないでしょうか?
賞を与えて出版してくれてよかったと思います。
少なくともぼくは読めてうれしかったです。(その意味では、優秀賞か、あるいは「このミステリーがすごい!」大賞らしく、隠し玉でもよかったんですけどね)
探偵のキャラクターも、周りの登場人物も、事件も、見事なまでに既視感があるというか、どこかで読んだことがあるような印象ですが、それを堂々と貫き通しているのが立派です。
読んだ印象は、目新しさはなく、既視感があるものではあっても、こういう作風、実は意外と少ないような気がします。典型的すぎる王道は、かえってみんなが避けるからかもしれません。
同じ主人公でシリーズ化されているようですので、楽しみです。
事件の構図や、作者が意識している司法の問題に独自色が出てくれば、言うことなし、です。
解説で茶木則雄も触れていますが、「日本の司令塔ばしよるったい」という入院患者とのやりとりは、傑作なので、この今村という患者にまた会いたいけど、それは無理でしょうねぇ。
<蛇足>
213ページにでてくる「釈迦に説法」という語。
「この言葉の使い方自体は理論的には大きく間違っていなそうだ」と書かれていますが、間違っていますよね!
言うとしたら、釈迦に説法ではなく、馬の耳に念仏、でしょうか?
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