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僕はお父さんを訴えます [日本の作家 た行]


僕はお父さんを訴えます (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

僕はお父さんを訴えます (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 友井 羊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/03/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。何者かによる動物虐待で愛犬・リクを失った中学一年生の向井光一は、同級生の原村沙紗と犯人捜しをはじめる。「ある証拠」から実父に疑念を持った光一は、司法浪人の友人に教わり、実父を民事裁判で訴えることを決意する。周囲の戸惑いと反対を押して父親を法廷に引きずり出した光一だったが、やがて裁判は驚くべき真実に突き当たる!


昨日の「弁護士探偵物語 天使の分け前」 (宝島社文庫)が大賞を受賞したときの「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作です。
この年は、大賞作にも優秀作にも法廷が出てきたんですね。

まず、「僕はお父さんを訴えます」というキャッチーなタイトルがなかなかよいではないですか。
タイトルをみたとき、どういう話になっているんだろう、といろいろと想像したんですが、あらすじを読んでびっくり。タイトル通り、息子が父親を民事で訴える。なんとまあ、ストレートな。
中学一年生が、父親を訴える、というのは、あちこちに無理がありそうです。ちょっと危ないところもありますが、訴訟に持ち込むまで、それなりに丁寧に、130ページまで描かれていきます。ここが結構楽しい。

ミステリとして作品を構成する以上このまま単に民事裁判を進めていっても意外性はないので、作者は何を仕掛けているのかな、と想像しながら読んでいくことになるわけですが、そう考えると逆に作者の狙いに見当がついてしまいます。
かなりあからさまな部分(伏線?)もありますし、ミステリを読み慣れた人にとっては、この結末は「驚くべき真実」ではありません。でも、そこへ至る道筋が楽しい。
その意味では、帯に書かれた乙一の
「想像の斜め上! 僕はこの本を推薦します。」
という推薦文が光っていますね。
想像を超えている、と言い切るのはちょっとためらってしまいますが、想像の範囲内でつまらない、というわけでもない。「斜め上」って、ステキな表現だと思います。

とても重苦しいラストではありますが、全般的にあっさりした筆致で、主人公の光一を取り巻く人間もそれなりに個性的に描かれていますし、次作が楽しみだと思いました。


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