猿猴 [日本の作家 田中啓文]
<裏表紙あらすじ>
聖徳太子による「人類滅亡」を意味する預言は真実か? 冬山で遭難した奈美江が洞窟で見たものは? 望まぬ妊娠、殺人事件、不気味な宗教団体、秀吉の埋蔵金……その背後に見え隠れする奇怪な「猿」の影。運命の嵐に翻弄される奈美江は、やがて世界の根源の謎に迫っていく。著者渾身の文庫書下ろし伝奇小説。
田中啓文の伝奇小説です。ミステリではありません。
冒頭に、「聖徳太子訳未来記」からの引用文があって、いかにもそれらしい。
「猿猴つひに蘇り、しかる後、人類を喰らふべし。」
駄洒落成分はほとんどないですが、荒唐無稽といってよい展開は、いつもの調子で楽しめばよいと思います。
文庫の帯に、評論家の笹川吉晴さんの推薦文(?) がついていまして、これが本書にぴったり。
「『猿猴』にはジャズも落語もない。人情も、庶民の味覚もない。あるのはただ伝奇という名の悪い冗談、グロと奇想にまみれた、神話と歴史への黒い哄笑。該博な教養も、常識を穿つ論理も、奔放なイマジネーションも、全ては馬鹿馬鹿しい思いつきを具体化するためだけに。この壮大な無駄遣いこそ田中啓文、いや小説の神髄だ!」
小説の神髄、かどうかはともかくとして(笑)、田中啓文らしさに満ち溢れています。楽しい。
もっとも、まじめな読者は怒り出すかもしれませんが....
タグ:田中啓文
コメント 0