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残留思念(サイコメトリー)捜査 オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル [日本の作家 あ行]


残留思念捜査(サイコメトリー) オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル (宝島社文庫)

残留思念捜査(サイコメトリー) オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル (宝島社文庫)

  • 作者: あいま 祐樹
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大学での講義のかたわら、付属女子高の非常勤講師を任された渋谷一樹は、以前、暴漢から助けた生徒・二ノ宮莉音と思わぬ場所 ―― 誘拐事件の関連現場で再会する。旧知の間柄である警視庁捜査一課の今尻によれば、莉音は催眠状態で“空間に残された思念”を読み取る能力をもつという。心理学者として催眠導入もできる渋谷は、莉音とコンビを組み、世間を震撼させる連続誘拐事件の謎に迫るが……。


第十一回(2013年)「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉です。
残留思念を読み取る能力のある女子高生が、心理学者で催眠術をかけることのできる高校教師と組んで連続誘拐事件に迫る。で、その活動が女子高生自身の過去にもつながっていく、と。
なんかもう、手垢に塗れたといってもいいようなストーリー展開です。
扱われている事件が事件だけに暗く陰惨な側面もあるものの、すらすらと軽妙に読めますが、特に目新しさのない作品でした。
主人公二人、渋谷と莉音のキャラクター処理がラノベっぽいというのが新しいのでしょうか? それなら普通のラノベを読んでいれば良いような気がしますが...
だいたい、副題に「オレ様先生」とあって、それは視点人物である渋谷一樹のことなんですが、彼、ちっともオレ様ではないですよ。オレ様っぽいのは冒頭のプロローグだけで、あとは全編、女子高生莉音に恋してるダメ男くんです。いや、そのプロローグにしても、暴力的なだけで、オレ様というのとはちょっと違うようです。
オレ様キャラというのは、傍から見ているからこそ、であって、内面を書いてしまっては、イメージが崩れてしまうか、あまりにも不遜すぎて読者に受け入れられないか、という惧れがあるのではないでしょうか。オレ様の一人称という冒険は買いますが、着地失敗という感じです。
 
それを含め全般的に粗いです。人物設定も、プロットも、文章も。
応募作に、加筆・修正を加えたもの、というのが隠し玉の位置づけですが、それなら文章などにはもっとしっかり気を配ってほしい。
「捜査が煮詰まっているからわたしが呼ばれた」(46ページ)--「煮詰まっている」という語の使い方を作者は(そして編集者も)ご存知ないらしい。
「憮然として、俺は自分の車を指差した」(50ページ)--「憮然として」を、不機嫌、腹を立てて、という意味で使っているようですが、それは誤用です。
「刑事事件に限らず被告人の中には」(250ページ)--被告「人」は刑事事件にしかいないでしょう。
「俺は自分のふがいなさに頭を抱えた」(261ページ)--「ふがいなさ」の意味を勘違いされています。
いちいちメモをとって読んでいるわけではないので、これらは今ぱらぱらとページをめくっていて拾ったものですが、簡単にこれだけ見つかります。1冊全体ではいったいどのくらいの変なところが見つかるのやら。
一人称を「俺」に設定しているから、という言い訳には限界があるでしょう。

もともと隠し玉は、当たり外れが激しいとはわかっているものの、これはちょっと残念でした。


<蛇足>
「カナダの学会に掲載されたあなたの論文を読みました。あれが事実なら、いや、学会に正式に発表された論文なんだから捏造であるはずがないんですが」(273ページ)
には思わず笑ってしまいました。


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