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秘密結社にご注意を [日本の作家 さ行]


秘密結社にご注意を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

秘密結社にご注意を (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 新藤 卓広
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/04/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ストーカー容疑から会社をクビになり、引きこもりの生活を続けていた青野恵介は、ひょんなことから“秘密結社”に就職することになる。息子を誘拐された会社員は、犯人からの指示でのこぎりを購入している。ピッキングが趣味の男は挑戦状を受け取り……。まったく無関係にみえたそれぞれの事件がやがてつながり始めて――。『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞のユーモア・ミステリー。


前回の「QED 出雲神伝説」 (講談社文庫)を間に挟みましたが、この「秘密結社にご注意を」は、前々回の「コレクター 不思議な石の物語」 (宝島社文庫)と同時に、『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を受賞した作品です。
「コレクター 不思議な石の物語」は独特の雰囲気を湛えた作品でしたが、この「秘密結社にご注意を」はテンポ良いストーリー展開を楽しむ作品です。
といっても、冒頭からラストへめがけて一直線に突き進んでいくテンポ良さではありません。
さまざまなエピソードがちりばめられて、ラストへ向けて、関係づけられて収斂していく、というタイプの作品です。あえて言うと、伊坂幸太郎の「ラッシュライフ」 (新潮文庫)のようなイメージです。

まず冒頭がすばらしいですね。
「傘をさして歩いている。だが、雨は降っていない。日差しが強いわけでもない。それなのに、傘をさして歩いている。
 なぜかと聞かれれば、こう答えるよりない。
 『それが今日の仕事だから』
 いったい何の仕事だと聞かれれば、こう答えるよりない。
 『そんなこと俺にも分からない』」
何事かな? どういうことかな? と惹きつけられますし、文章のリズム感が心地よい。
このあときっと、楽しく読めるだろうな、とそんな予感を抱かせてくれます。

数々のエピソードが収斂した結果得られるストーリーがちょっと目新しさに欠けるのが難点といえますが、いやいや、その道中は楽しいし、まとめていく作者の手つきはまずまず鮮やかです。
でも考えてみると、秘密結社なんて、世界征服を目指すものでなければ(笑)、その目的は、ことミステリの中で位置づけるならそんなにバリエーションなさそうですし、この方向感は王道ということでしょうか。

パズル的なストーリー展開が秀でている分、人物の描写がお留守になった感があるのが欠点でしょうか。
もっともこの展開でじっくり書き込むとストーリーが滞ってしまうので難しかったのかもしれません。むしろ、ラノベ風というか、レッテルを貼ったかのような人物設定が、スピーディーな読書体験に役立っているのかな?
それでも、もう少し人物描写にも気を配っていただきたいですね。
これがデビュー作ということですから、これからとても楽しみな作家登場、と感じました。




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