背表紙は歌う [日本の作家 大崎梢]
<裏表紙あらすじ>
作り手と売り場、そのふたつを結ぶために。出版社の新人営業マン・井辻智紀は今日も注文書を小脇に抱え、書店から書店へと飛び回っている。しかし取次会社の社員には辛辣な言葉を投げかけられ、作家が直々に足を運ぶ「書店まわり」直前にはトラブルを予感させる出来事が……。井辻くんの奮闘をあたたかな筆致で描いた、本と書店を愛する全ての人に捧げるミステリ短編集第二弾!
ようやく2015年に読んだ本の感想に突入です。
「平台がおまちかね」 (創元推理文庫)に続くシリーズ第2弾ですが、やはりミステリ味は薄いですねぇ。
ここまで薄くなると、「日常の謎」ではなく、単なる「日常」のような気もします。
「ビターな挑戦者」
「新刊ナイト」
「背表紙は歌う」
「君と僕の待機会」
「プロモーション・クイズ」
の5話収録です。
気になったのは、「プロモーション・クイズ」。
成風堂書店のあの人が関連する、大崎梢の愛読者にはたまらない1作なのだと思いますが、こういうの、どうなんでしょうね?
本に書かれているなぞなぞと、それを受けて成風堂書店のあの人が書いたなぞなぞ。それを解く、という話なんですが、こういう建て付けだと大げさに言えば無限に書けちゃいますよね。
なぞなぞのロジック(というのでしょうか?)が、図抜けて突飛だとか、意外性があるとかいうのならまだしも、普通のなぞなぞなんです(突飛すぎたり、意外性がありすぎると、解けなくなっちゃいますけれどね)。
こういうのはどうもなぁ。
これだと単なるクイズですよね。
「ビターな挑戦者」ももう一つですね。
嫌味な取次会社の社員が登場するんですが、もうそれだけで、当然ながら、そんなに嫌味ではない、いや嫌味は嫌味でも実はそれなりにいいところがある、という着地に向っていることが丸わかりで、そしてその通りの着地を見せる。
一方、気に入ったのは、「君とぼくの待機会」。
文学賞の発表間近の作家の様子とか、出版社営業の様子とか興味深かったので。
賞が出来レースだという噂が事前に流れる。その源をつきとめる、というのも「日常の謎」としてはアリだと思います。
着地が平凡ではあっても、嫌みのないところへ落ち着く手さばきも、この作品においては悪くないですね。
ただ、ミステリとして読むと不満だらけでも、シリーズを読んでいこうという気にさせる居心地の良さがこのシリーズにはあります。井辻くん、応援したいですもん。
これ、東京創元社から出ているのでなければ、こういう不満も少なかったかもしれません。でも逆に、創元推理文庫でなければ、手に取ることもなかったかも。難しいところです。
「君とぼくの待機会」で顕著なように、出版をめぐる舞台裏をいろいろと教えてもらいたいですね。
というわけで、このシリーズにはミステリを期待せず、井辻くんとの再会を期待することにします。
でも、このあと、出ていないですね。
31さん、こんにちは。
成風堂書店シリーズとともに私も愛読しております。
仰る通り、たしかにミステリ色はほとんどないですよね。
創元推理文庫でなければ、おそらく私も購入してない気がします(笑
次回作は確か成風堂書店とのコラボ作品だったと思います。
by コースケ (2015-03-21 17:43)
コースケさん、nice! とコメントありがとうございます。
そうですか、次作は成風堂とのコラボですか。
成風堂の方だと思っていた「ようこそ授賞式のゆうべに」が、こちらの井辻くんシリーズでもあるわけでですね。
いよいよ二人が会うんですね!
「ミステリじゃない」とかぶつぶつ文句をいいながら、きっと文庫になれば買ってしまうと思います。
by 31 (2015-03-23 21:05)