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ムカシ×ムカシ [日本の作家 森博嗣]


ムカシ×ムカシ (講談社ノベルス)

ムカシ×ムカシ (講談社ノベルス)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/06/05
  • メディア: 新書


<裏表紙あらすじ>
「やっぱり、河童の祟りですか?」
大正期、女流作家の百目一葉を世に出した旧家・百目鬼家。
当主の悦造・多喜夫妻が、広大な敷地に建つ屋敷で刺殺された。
遺された美術品の鑑定と所蔵品リストの作成依頼がSYアート&リサーチに持ち込まれる。
河童が出るという言い伝えがある井戸から、新たな死体が発見され、事件は、異様な連続殺人の様相を呈し始めるのだった。
百目鬼一族を襲う悲劇の辿りつく先は?


「タカイ×タカイ」 (講談社文庫)に続く、久しぶりのXシリーズ。
「タカイ×タカイ」 が出たのが2008年1月で、この「ムカシ×ムカシ」 が2014年6月なので、実に6年半ぶり。
と思ったら、続けて「サイタ×サイタ」 (講談社ノベルス)が11月に出ているんですよね。

読み始めて、このシリーズって、どういう建て付けだったかなぁ、と思ったりもしたのですが、すぐそんなことは忘れて、森ミステリィの世界へ。
「世の中さ、金に目が眩んで頭がおかしくなる奴がいる、というのが一般的な定説みたいだけれど、本当にそんな奴っているのかな?」「金に目が眩んだ奴も、計画的で、策略的で、まったく狂っていない。その一方で、金には無縁だとか、今日の酒代さえあればいいんだとか、そういう潔いことを言っている人間にかぎって、カッとなって人を殺したりするんじゃないかな」
「基本的に、殺人を犯す人間というのは、破滅的というか、自虐的だと思うな。自分を諦めている。自分を見捨てている。もうどうにでもなれっていう感じだろうね。癇癪を起して八つ当たりしているような状態に近い。原因は自分以外にあるにせよ、でも、その原因をもっと大きくして、取り返しのつかないようにしてやるぞっていう、そんな甘えっていうのかな、それは明らかに本人のせいだ」(どちらも68ページ)
なんて、ステキですよねぇ。(いや、ステキという表現はふさわしくないか?)

密室とかアリバイとか、出てはきますが、出てくるってだけですね。
それよりもやはり本作は、動機、でしょうねぇ。
森ミステリィの常として、動機は明確に語られるのではなく、登場人物が推測するだけなのですが、この動機はすごい。
上で引用した、68ページのセリフなんかに照らして考えると、なかなか味わい深い。

森博嗣って、本質的には、文章力の作家なのではなかろうか、とそんなことを考えました。
美文とか文章がうまいとか言われるようなタイプではないのですが、独特のレトリックや表現で、通常だとありえないことをすんなりと読ませてしまう。その意味では、作品全体を貫くトーンも重要です。
文章力というよりは、表現力かも。
冷静に考えれば、かなり荒唐無稽な作品が多いのに、そういう印象を持ちにくい。
いくつかのトリックも、考えてみればしょぼいものが多いのに、読んでいる間はかなり鮮やかな印象を持つ。
森ミステリィについては、「理系ミステリ」と変な表現をされることがありましたが、これはやはり文章の力で、小説ならではの作品群が屹立しているように思いますので、くだらない表現を踏襲すれば、理系の方ではありますが「文系」の力を発揮されているのではないでしょうか?

この作品で特徴的だと思った動機も、妙にリアルに感じられてしまいました。
怖い。



<蛇足>
「いわゆるダイイング・メッセージだね」
「お皿だから、ダイニング・メッセージじゃない」
「面白いね、それ」真鍋は少し感心した。なかなかインテリジェンスを感じさせるジョークだ。(175ページ)
ん? インテリジェンス? 感じませんけど...(笑)


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灯台杜と緑の少年


<2017.09追記>
4月に文庫化されていました。今更ですが、書影を。

ムカシ×ムカシ REMINISCENCE (講談社文庫)

ムカシ×ムカシ REMINISCENCE (講談社文庫)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫



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Kun-KunBEAR

お久しぶりです。
森博嗣「すべてがF~」から再読続行中です!
この本も「サイタ×サイタ」も
そして単行本「暗闇・キッス・それだけで」も
読みましたょ!!
by Kun-KunBEAR (2015-03-24 17:35) 

31

Kun-KunBEARさん、nice! & コメントありがとうございます。
「サイタ×サイタ」も単行本「暗闇・キッス・それだけで」も、ただいま絶賛積読中(?)です。
早く読まなきゃと思っていますが、なかなか...です。
by 31 (2015-03-25 22:36) 

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