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鍵のない家 [海外の作家 は行]


鍵のない家 (論創海外ミステリ)

鍵のない家 (論創海外ミステリ)

  • 作者: E.D. ビガーズ
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2014/08
  • メディア: 単行本




単行本です。
昔、「チャーリー・チャンの活躍」 (創元推理文庫)を読んだことがあるはずですが、覚えていません。
探偵役のチャーリー・チャン初登場作、なわけですが、チャーリー・チャンは映画化やラジオドラマなどにもされた、アメリカでは(当時)非常に高名なキャラクターです。中国人、というのがポイントですね。
この「鍵のない家」はハワイが舞台で、チャーリー・チャンはホノルル警察の巡査部長です。
チャーリー・チャンはハワイが拠点となる探偵だったんですねぇ。認識がありませんでした。
物語はおおむね、ジョン・クィンシー・ウィンタスリップというボストン上流階級に属する青年の視点で語られます。
ハワイに居ついてしまったおばミス・ミネルバを連れ戻すという役目を担ってハワイにやってくるものの、次第にハワイに惹かれていく、という展開。
この展開が、常套的といえば常套的なんですが、非常に心地よい作品です。楽しい。
ボストン上流階級とハワイ、という異文化もあれば、探偵役が中国人という異文化もある(日本人も登場します)。これらの融合が、このシリーズの醍醐味なのかもしれません。

ミステリ的には、「本作の原題“The House Without a Key” は、鍵をかける必要がないほど平穏な土地にあるダン・ウィンスタリップ邸を指すとともに、手がかりが次々と消えていき、『手がかり一つない(without a key)』状態になることを読者に告げるものではないだろうか」と解説で大山誠一郎が指摘している通り、わりと手がかりが興味深い作品です。
チャーリー・チャンが素晴らしいのは、
「本の中では指紋やその他の科学的方法は役に立ちます。現実の捜査ではそうでもありません。私の経験は、人々を人間として深い考察の対象にすべしと命じます。人間の激しい心の動きを。殺人の背後にあるもの、それは何か? 憎悪、復讐、口封じ、あるいは金銭。人々を人間としてつねに研究するのです」(158ページ)
と心理学的推理を標榜しているようでいて、
「この仕事では証拠がぜったいに必要です」(393ページ)
と物理的証拠も重視していて、安心感があるところでしょう。
推理法同様、性格もかなり安定しています。

ジョン・クィンシー・ウィンタスリップのロマンスも快調で、バランスの良い作品だなぁと感じました。
このシリーズの他の作品も読んでみたいです。
「チャーリー・チャンの活躍」も、いつか読み直さなければ。


原題:The House Without a Key
作者:E.D. Biggers
刊行:1925年
翻訳:林たみお

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