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犯罪 [海外の作家 さ行]


犯罪 (創元推理文庫)

犯罪 (創元推理文庫)

  • 作者: フェルディナント・フォン・シーラッハ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/04/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。──魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。弁護士の著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの真実を鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作!


裏表紙側の帯をまずは引用しましょう。

全世界80万部突破、33か国で翻訳
各国に衝撃を与えた驚異のデビュー作、文庫化!
第1位 2012年本屋大賞[翻訳小説部門]
第2位 「このミステリーがすごい! 2012年版」海外編
第2位 「ミステリが読みたい! 〈2012年版〉」
第2位 「週刊文春」 2011ミステリーベスト10 海外部門
クライスト賞・ベルリンの熊賞・今年の星賞受賞

これだけずらっと並んで、1位だ2位だと言われると、こういうのは気が引けますが、かなり地味な本です。
すごーく淡々と書かれていきますし、大きな山場があるわけでもない。

たとえば冒頭の「フェーナー氏」。48年間も耐えに耐えた夫が72歳になって妻を殺す。ただ、それだけです。
「タナタ氏の茶碗」は、日本人の実業家から家宝(?) の茶碗を盗んだ一味が迎える運命を描きますが、もっともっと激しい作品にもなりそうなプロットですが、あくまであっさりと。
「チェロ」は、資産家の父から独立して暮らす姉弟だったが、弟が脳に損傷を受けて、次第に歪んでいく生活。
「ハリネズミ」は、犯罪一家の愚昧な弟が、裁判所を手玉にとって兄を救う。
「幸運」は、ベルリンで身体を売って身を立てていた密入国者(難民)イリーナと、貧しい青年。ところがある日イリーナの客が死んでしまい。
「サマータイム」は、不倫相手を殺した疑いを掛けられたボーハイムを救った手がかり。
「正当防衛」は、駅でネオナチ二人を殺した男。正当防衛か、それとも?
「緑」は、伯爵は羊を殺している息子をかばっていたが、近所の少女が行方不明になって。
「棘」は、市立古代博物館の警備員が大理石像「棘を抜く少年」が気になって仕方なく...最後には
「愛情」は、突然彼女の背中をナイフで傷つけた青年。その動機は。
「エチオピアの男」は、強盗で逮捕された男はエチオピアで素晴らしい過去があったという。
紹介にもなっていない文章で恐縮ですが、弁護士の視点だから、という以上に、いずれも本当に淡々とつづられます。
「犯罪」というタイトルよりも「犯罪者」というタイトルの方がふさわしいような気もしました。

ところで、「サマータイム」なんですが、タイトル通りサマータイムを利用した仕掛け(?)は読んだときすぐに、おかしいな、と思ったんですが、裁判での関係者、誰も気づかなかったんでしょうか? サマータイムを導入していない日本人にはわかりにくいとは思いますが、ドイツ人なら聞いた瞬間理解しちゃうと思うんですが。
あと、「緑」のラストがわかりませんでした。2回読んでもわかりません。数字が来るべきところに、「緑」??

おもしろいよー、と言って回るようなタイプの作品ではありませんが、こういう作風のものもたまにはいいかも。





原題:Verbrechen
作者:Ferdinand von Schirach
刊行:2009年
翻訳:酒寄進一




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