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魔女は甦る [日本の作家 中山七里]


魔女は甦る (幻冬舎文庫)

魔女は甦る (幻冬舎文庫)

  • 作者: 中山 七里
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/08/01
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
元薬物研究員が勤務地の近くで肉と骨の姿で発見された。埼玉県警の槇畑は捜査を開始。だが会社は二ヶ月前に閉鎖され、社員も行方が知れない。同時に嬰児誘拐と、繁華街での日本刀による無差別殺人が起こった。真面目な研究員は何故、無惨な姿に成り果てたのか。それぞれの事件は繋がりを見せながら、恐怖と驚愕のラストへなだれ込んでいく……。


ようやく、引っ越し荷物の中で、読了後の本を詰めた段ボールが見つかりました。なので、以前読んだ本の感想も書いていきます。

この「魔女は甦る」 は作者の中山七里が「さよならドビュッシー」 (宝島社文庫)で第8回このミステリーがすごい! 大賞を受賞する前に、第6回このミステリーがすごい! 大賞に応募した作品を改稿したもの、とのことです。
いろいろなジャンルの作品を書いている中山七里ですが、この作品のジャンルは、広義のミステリーではあっても、どちらかというとホラー??
最初の方は、冒頭の凄惨な殺人の捜査、という趣きではじまるのですが、事件の黒幕と思しき怪しげなドイツの製薬会社と閉鎖された研究所が出てきて、このあたりで、なんとなく事件の真相の見当がついてしまいます。
さて、ここからどうやって展開していくのかなぁ、と思うところで、ずずーっとサスペンスというか活劇に転じているのがポイントですね。

ヒッチコックの映画に似ている、という指摘もありそうですが(作中でも言及されます)、あちらはヒッチコック自身が理由がわからないから怖い、と言っているのに対して、こちらは理由がわかっても怖いよ、と中山七里は言いたいのかもしれませんねぇ。
ただ、この作品を読んでみた感想としては、理由がわかっても怖いことは怖いのですが、怖さの質が変わってしまったように思います。
得体のしれない怖さ、だったものが、単に物理的に怖い(力の強いもの、素早いものが怖い)というふうに。その意味では、幽霊の正体見たり...

タイトルの魔女というのは、被害者が言った言葉
「僕だって魔女の末裔ですよ」
から来ていますね。
この作品でいう魔女は、一般的な魔女のことを指します。
「薬草の調合、災厄封じの祈り、天からの神託。そういったものが最先端の技術であった頃、魔女と称された者たちはその道のスペシャリストだったんですね。彼女たちは土着の医者であり、気象予報士であり、為政者の助言者、信仰の司祭だった。言い換えれば現代に続く職能者の始祖で、薬剤師もその一つでしょう」(91ページ)と説明されています。
そしてまたそれを受けて、ラスト近くで主人公の刑事槇畑が言います。
「これは現代の甦った魔女の物語だ。人間不信に陥っていた◯◯◯という魔女の末裔が、その怨念から人の世に災いを為すような呪いをかけてしまった。」(◯◯の部分はネタバレなので伏せておきます)
「人が憎悪の呪縛から逃れられない限り、魔女はいつでも何度でも甦る」(361ページ)
結局怖いのは人、なんですねぇ。

この作品には続編「ヒートアップ」 (幻冬舎文庫)があります。
そちらも読んでみようと思います。



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