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茶坊主漫遊記 [日本の作家 田中啓文]


茶坊主漫遊記 (集英社文庫)

茶坊主漫遊記 (集英社文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/02/17
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
関ヶ原の戦いから34年後の夏、地蔵と見紛う小柄な老僧と容貌魁偉な従者の一行が街道を行く。実はこれ、京都六条河原で斬首されたはずの石田三成であった。行く先々で起こる奇ッ怪な事件をズバッと解決、高笑いを響かせながらの諸国漫遊だが、どうやら秘めたる目的があるらしい。一方、三成存命を知った将軍家光は、一行の始末を隠密・柳生十兵衛に命じるが―。ミステリ仕立ての痛快時代小説。


引用しておいていうのもなんですが、↑のあらすじ、少々フライング気味でして、この老僧が石田三成であることは、なかなか明かされない趣向になっているんです...

さておき、あらすじも見る前、タイトルだけを見て、
「茶坊主漫遊記」 か、なるほど、時代物ねぇ、と思っていたのですが、読む前に気づきました。
坊主となっていますが、要するに神職で、茶+坊主、すなわち、ブラウン+神父、ブラウン神父のもじりなんですね。
なるほどな、と思って目次をみてみると
第一話 茶坊主の知恵
第二話 茶坊主の童心
第三話 茶坊主の醜聞
第四話 茶坊主の不信
第五話 茶坊主の秘密
ですから、明確ですね。
(ただし、ブラウン神父は、童心→知恵→不信→秘密→醜聞の順ですが)
さらに第一話を読むと、茶坊主の相棒(?)が、腐乱坊。いや、恐れ入りました。
これ、でも、ミステリを読まない人が読むと、わけわかんないのでは? と余計な心配をしてしまいます。

第一話は、狭い洞窟の中で、奥から射殺されたように見える死体を扱ったちょっと小洒落たミステリ。
第二話は、仇討を題材にさらっと逆転して見せる小粋な感じ。
その後、次第次第に時代物としての色彩が強くなっていき、第三話は瀬戸内の小さい島菩提島に眠ると言われる逆し丸の財宝の行方を、第四話ではキリシタン弾圧激しい領主寺沢堅高を、そして最終話では最終目的地(?)である薩摩藩で豊臣の最期にまつわる謎を扱います。
いずれも、ブラウン神父をもじっただけあって(?)、逆説的な謎解きを見せてくれまして、満足。
とかく駄洒落に注目が集まりがちな田中啓文ですが、デビューが「本格推理〈2〉奇想の冒険者たち」 (光文社文庫)に投じた作品というだけあって、ちゃんとミステリとしての目配りも効いています。
一方で、柳生十兵衛や宮本武蔵、猿飛佐助まで登場させて豪華ですね。

この作品はこれで完結なんだと思いますが、続きがあれば読んでみたいですね。
それくらい、この茶坊主=石田三成、気に入りました。




タグ:田中啓文
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