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お言葉ですが…⑨ 芭蕉のガールフレンド [その他]


お言葉ですが…〈9〉芭蕉のガールフレンド― (文春文庫)

お言葉ですが…〈9〉芭蕉のガールフレンド― (文春文庫)

  • 作者: 高島 俊男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/06/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙内容紹介>
手紙の作法にうるさい日本人。でも男が女に呼びかける手紙用の呼称は、夏目漱石の場合には「貴女」「貴方」など、「あなた」と読む言葉にほぼかぎられ、驚くほど少ない。芥川龍之介は恋文では愛称で「文ちゃん」と呼びかけているのに、結婚すると直に「お前」にかわっている。さて、江戸時代の松尾芭蕉の場合はどうだったのだろうか。


この本の著者、高島俊男の本は、きっかけは忘れましたが、「本が好き、悪口言うのはもっと好き」 (文春文庫)を読んだのが最初です。
すっかり気に入って、その後文春文庫から出ている、「お言葉ですが…」 (文春文庫)のシリーズをずっと買ってきています。
このシリーズ、
お言葉ですが… (文春文庫)
お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)
お言葉ですが…〈3〉明治タレント教授 (文春文庫)
お言葉ですが…〈4〉広辞苑の神話 (文春文庫)
お言葉ですが…〈5〉キライなことば勢揃い (文春文庫)
お言葉ですが…〈6〉イチレツランパン破裂して (文春文庫)
お言葉ですが…〈7〉漢字語源の筋ちがい (文春文庫)
お言葉ですが…〈8〉同期の桜 (文春文庫)
お言葉ですが…〈9〉芭蕉のガールフレンド― (文春文庫)
お言葉ですが…〈10〉ちょっとヘンだぞ四字熟語 (文春文庫)
お言葉ですが…〈11〉(連合出版)
と11冊出ているんですね。
最後の11巻だけ、文藝春秋ではありません。2006年に出た後、文庫化もされていませんね。
もともと週刊文春に連載されていたものが順次刊行されていったものなので、文藝春秋ではないのはちょっと???ですね。

さておき、言葉をめぐるエッセイです。
漢字だと、新字体ではなく旧字体を推しておられるので、新字体でしか知らない世代であるわれわれには、ちょっと古風に思えるところもありますが、言葉に関することなんて、古風な人に語ってもらう方がいいような気もします。
いろいろと、目からうろこ、というか、ああ、知らなかったなぁ、と思えることが出てきて、楽しいです。

たとえば、川端康成の「雪国」 (新潮文庫)を扱った「国境の長いトンネルを抜けると……」
金谷武洋先生の文章からの引用ではありますが、「雪国」 の冒頭のサイデンステッカーによる英訳が出てきます。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
「The train came out of the long tunnel into the snow country」
で、「原文では、読者の位置は当然、作者とともに、汽車の車中になる。
ところが英訳を読んだ英語話者は全員、上空から見おろした情景、ととるそうだ。」
うーん、鋭くて、おもしろいですよね。

そして、続けて、原文の冒頭の「国境」をどう読むか、と問います。
こっきょう? くにざかい?
個人的には、何も考えることなく、いままで「こっきょう」と読んでいました。
でも、確かに、意味から考えれば、「こっきょう」は変ですね。「くにざかい」に違いない。
けれどけれど、音のリズムから考えれば、「くにざかい」はちょっと分が悪い。「こっきょう」でないとしまらない。
ね、おもしろいでしょ?

中勘助の「銀の匙」 (岩波文庫)を扱った「『銀の匙』の擬声擬態語」では、「銀の匙」 が名文であることを、擬声擬態語の観点からするどく指摘しています。
「銀の匙」 をゆっくりと音読で再読してみたくなりますね。

漢字「十」の読み方を扱った「七時十分になりました」は、このテーマはこのシリーズで扱うのは初めてではないのですが、楽しく読めました。
「じゅっぷん」は誤りで、「じっぷん」が本来は正しい、というのは何度読んでも興味深いです。個人的には「じゅっぷん」と読んじゃっていますが...

物の数え方としての、「本」の謎? を扱った、「論文は何本?」も、おもしろい。
意識したことなかったですが。

「日本人にとっては、組織のなかでの役割がすなわち自分なのである。」ということを扱った「役割に生きる日本人」もいろいろと考えるところのある興味深い話。

当然ながら、次の「お言葉ですが…〈10〉 ちょっとヘンだぞ四字熟語」 (文春文庫)も買ってありますので、いずれ読みます。
こういう本をたまに読んで、言葉に関して思いを巡らせるというのもいいものです。楽しみです。



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