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死と呪いの島で、僕らは [日本の作家 や行]


死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)

死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)

  • 作者: 雪富 千晶紀
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/09/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
東京都の果ての美しい島。少女、椰々子(ややこ)は、死者を通し預言を聞く力を持ち、不吉だと疎まれている。高校の同級生で名家の息子の杜弥(もりや)は、そんな彼女に片想い。しかし椰々子が「災いが来る」という預言を聞いた日から、島に異変が。浜辺に沈没船が漂着し、海で死んだ男が甦り、巨大な人喰い鮫が現れる。やがて島に迫る、殺戮の気配。呪われているのは、島か、少女か。怖さも面白さも圧倒的!! 第21回日本ホラー小説大賞〈大賞〉受賞作!


日本ホラー大賞受賞作です。
単行本の時のタイトルは、「死呪の島」。文庫化の際に改題されました。(ちなみに、応募時点のタイトルは、「死咒の島」だったそうです)
これ、大賞、ですか...歴代受賞作と比べるとかなり軽い感じがします。

なかなか大賞が出ないことで知られる日本ホラー小説大賞、歴代の受賞作を並べてみると、
第2回 瀬名秀明「パラサイト・イヴ」 (新潮文庫)
第4回 貴志祐介「黒い家」 (角川ホラー文庫)
第6回 岩井志磨子「ぼっけえ、きょうてえ」 (角川ホラー文庫)
第8回 伊島りすと「ジュリエット」 (角川ホラー文庫)
第10回 遠藤徹「姉飼」 (角川ホラー文庫)
第12回 恒川光太郎「夜市」 (角川ホラー文庫)
第15回 真藤順丈「庵堂三兄弟の聖職」 (角川ホラー文庫)
第16回 宮ノ川顕「化身」 (角川ホラー文庫)
第17回  一路晃司 「お初の繭」 (角川ホラー文庫)
第19回 小杉英了「先導者」 (角川ホラー文庫)
第21回 雪富千晶紀「死と呪いの島で、僕らは」 (角川ホラー文庫)
第22回 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
全部が全部傑作とは思いませんが、確かに面白い作品が多いです。
その中でこの「死と呪いの島で、僕らは」 は軽めで、なんだか大賞受賞作というより、最近でいう読者賞受賞作みたいです。

と言うことでお分かりかと思いますが、非常に読みやすいです。
なんだかネガティブトーンのように受け止められそうなので、念のため申し添えておくと、軽いけれど、面白いです。高校生が主役を張っていることもあって、個人的には好印象の作品。
ただ、大賞受賞作というのが意外だった、ということです。

須栄島という南の離島を舞台に、「来るぞ、来るぞ」型のストーリー展開で物語は進んでいきます。
徐々に奇怪なエピソードが積み重ねられていくわけですが、うーん、振り返ってみるとちょっと無理がありましたでしょうか。
それぞれのエピソードが割とばらばらな印象を受けました。
最後のカタストロフィへ向かって、順々に盛り上がっていく、というよりは、いろんなエピソードが(相互に特段の結びつきなく)続けて起きて、最後にドーンと大きなエピソードが来た、みたいな印象です。
言い換えると、いろんなエピソードがつながった長編というよりは、同じ須栄島を舞台にしたいくつかの短編が並んでいて、最後の話が一番派手、という感じ?
逆にいうと、アイデア満載とも言えますね。
大森望が解説を書いていて、賞の選評を引用しているのですが、
「『死咒の島』が成功したのは、お約束の展開を守りつつ、次々と発生する怪奇な事件や現象にはバラエティを持たせ、そのひとつひとつをほどよくコンパクトにまとめて、物語を停滞させなかったからだろうと思います」(宮部みゆき)
というのも、そういう印象を裏付けますね。

全般的には、和のテイストなのですが(〈顔取り〉のエピソードが象徴的です)、豪華クルーズの話とか、遠く離れたハイチの話とかが混じっている点を、好ましくないと思われる読者もいることでしょう。
主人公杜弥と彼が想いを寄せる椰々子の設定や関係性も、型通りと言えば型通りなのですが、そういった様々な要素が、まさに「ほどよく」まとまっていて、抜群のリーダビリティとなっていますので、エンターテイメントとして優れていると思いました。
ホラー小説大賞には、そういったもの=読みやすさやバランスよりも、むしろ破壊力を期待するところがあるので、軽い、という印象を受けますが、次も読んでみようかな、と思わせてくれる居心地良さがあります(ホラーなのに、居心地良いのか、とまた叱責を喰らいそうですが)。







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