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Q.E.D.証明終了(46) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.証明終了(46) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.証明終了(46) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/17
  • メディア: コミック



この第46巻には「失恋」と「巡礼」の2つの話が収録されています。

第45巻の「初恋」で予告(?)されていた「例の落語家の人たちの事件」を扱っているのが「失恋」です。
「初恋」に対して「失恋」と、タイトルも対になっていたのですね。
こちらにもサム・ロイドのパズル「トリック・ドンキー」が引用されています。こちらは、まずまずうまく使われているように思いましたが、その分ネタが割れやすくなってしまっていますね。これでは、わかりやすすぎます。
扱われている謎は、一種の密室状態ともいえる楽屋での現金紛失事件なのですが、状況的には可能性が限られており、そのうえ「トリック・ドンキー」を受けて燈馬が「意外な人間同士がつながっている」というなんて、ちょっと読者のレベルを低く想定しすぎているのではないでしょうか?

謎の部分は置いておくとして、落語家を中心とした芸人が扱われていますが、角丸師匠のセリフがなかなか印象的です。
人間に幸せになる2つのスイッチを持っていて、1つ目は美味い飯を食ったり趣味に興じたり…自分だけで押せて幸せになれるスイッチ、2つ目は他人にほめられたり認められたりして他人に押してもらわない限り幸せと感じられねェスイッチ。
2つ目のスイッチは、喜びが強烈で、とめどなく推してほしいと思うしやみつきになるので、次第にスイッチを押してもらうためならなんでもしたいと思うようになる、と。
その上で、舞台とは他人にスイッチを押してもらう場所で、気が付くと大事なモノを失ってるかもしんねェ、とならないよう、お客さんに出すものと出さないものを分けることを説きます。
出すものが“芸”だと。
これを、まざまざと示す結末を猫柳あやめは迎えるわけですが、なるほどねー、と思いました。
<余談1>
現金(1万円)のことを、「戦闘力1万の諭吉カード」と読んでいるのは笑えました。

「巡礼」は、戦時中はるばる仏領インドシナのハノイまで赴き(しかも重慶近くの南昌からハノイまで歩いて!)自分の妻を殺した男の裁判で慈悲を乞うた外務省官僚雨水の心理の謎と、その雨水を書こうとしていたノンフィクション作家が原稿をお蔵入りさせたのはなぜかという謎を扱っています。
心理の謎、というのは、どこまでいっても探りきれないものではありますが、この作品は上手に手紙を使っていていたく感心しました。すばらしい。
凌遅刑(身体を少しずつ削って殺す、中国の一番重い刑罰)なんて言葉も出てきますが、被害者の遺族の気持ちは考えるのが難しいですね。
重いテーマですが、コミックという形態がすごくうまくマッチしているように思いました。
さすが加藤元浩です。
シリーズ第46巻にして、惰性に陥らずこのクオリティ、すごいですね。
<余談2>
サイゼリアをもじって、サイぞリアというのが出てきて看板にサイがうつ伏せの状態から背をそらすイラストが描かれていて笑いました。
どうせなら、サイぞリ屋にしてくれた方が、イラストにマッチしていたのに、残念。
<余談3>
燈馬が心ひかれた(?)カエルの置物、楽器を演奏しているもので、なんだかかわいいですね。
ぼくも欲しくなりました。






タグ:加藤元浩 QED
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