燔祭の丘 [日本の作家 篠田真由美]
『僕は――ヒトゴロシ』。謎の詩を残して姿を消した桜井京介は、久遠アレクセイの名に戻り、14歳まで育った屋敷にいた。神代宗の話を聞いた蒼は、京介を捜し歩き、20年前の忌まわしき事件を知る。久遠家のルーツが明らかになった時、父グレゴリの狂気が京介を襲う!「建築ミステリ」の金字塔、ついに完結!
「化学探偵Mr.キュリー4」 (中公文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続いて今年3月に読んだ本、6冊目です。
引用したあらすじにも書いてある通り、まさしく、ついに完結、です。
ここまでくると、建築探偵とか本格ミステリとかあんまり関係なくなってきていますね。
前作「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)で過去に遡ってみた物語は、現在時点に戻ってきます(解かれる謎は過去のものにせよ)。
『僕は――ヒトゴロシ』という京介は本当に人殺しなのか、という謎は、ミステリ読者なら当然「実は違った」という着地を想定して読むわけですが、さて、篠田真由美はどう料理したか、さすがに究極のネタバレになるので実際に読んでみてください、としかここでは書けませんが、なるほどそう来ましたか、という読後感でした。
たぶん、シリーズもここまで続いてくると、ミステリとしての解決云々もさることながら、シリーズのレギュラー登場人物たちがどうなるのか、にも読者は相応に興味を持つので、その意味でも意義深い完結編となっていると思いました。
作中、神代教授が振り返って
「血の繋がらない、だが心は結ばれた疑似家族」(439ページ)
と考えるシーンがありますが、まさにこれこそがシリーズのポイントだったのでしょう。
京介=アレクセイとの対決の相手であるラスボスたる久遠グレゴリは、親子なわけで、上で引用した部分とは対比になっている、と考えるのはさほど見当外れではないのでは、と思います。
言ってみれば
「血はつながっている、だが心はまったく結びついていない家族」
というわけですね。
とすると、この「燔祭の丘」で明かされる真相は、かなり印象に強く残りますね。
それにしても、グレゴリ、すごすぎ。
「お父様は人間ではないわよ!」
「お父様は疾うに、人間の限界を超えておられる」(660ページ)
なんてセリフも出てきますが、いやあ、本当に、人間を超えていますよ。
シリーズ番外編、スピンオフがいろいろと出ているようです。
文庫化を待って読み進めていきたいと思っています。
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