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タルト・タタンの夢 [日本の作家 近藤史恵]

タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)

タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/04/27
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
商店街の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。シェフ三舟の料理は、気取らない、本当のフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんな彼が、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。常連の西田さんが体調を崩したわけは? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか? 絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ。


5月に読んだ11冊目の本です。
近藤史恵の新しいシリーズです。
カウンターが七席、テーブルが五つという小さなフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」の店長=料理長三舟忍が探偵役をつとめる連作。
視点人物は、ギャルソンである、ぼくこと高築智行。レストランの従業員はそのほかに料理人・志村洋二とソムリエ・金子ゆきの2人だけ。合計4人のお店。
店の名前パ・マルの意味は、〈悪くない〉。ぼくが料理長を「変わった人」という理由の一つ。

「クレープシュゼットの青い火が、燃え上がった」
という印象的な一文で幕開けです。
このあとも、数々の料理、デザートが次々と出てきます。どれもこれもおいしそうで、読んでいるとおなかがすきそう。

常連さんが二日も体調を崩したことから意外な事実を導き出す、「タルト・タタンの夢」
凄まじく好き嫌いが激しい客の愛人がたどる顛末を描く「ロニョン・ド・ヴォーの決意」
料理人志村の妻が抱いていた積年の疑問を解く「ガレット・デ・ロワの秘密」
客の奥さんが急に出ていったわけを探る「オッソ・イラティをめぐる不和」
高校生の野球合宿で酒などないはずなのに泥酔した部員の謎を解く「理不尽な酔っ払い」
パリでの恋人との行き違いの原因をつきとめる「ぬけがらのカスレ」
パ・マルのチョコレートがまずいと喝破した客の心持をさぐる「割り切れないチョコレート」
の7編収録。
いずれの話にも、大詰めのところで(?) シェフ特製のヴァン・ショーが印象的に出てきます。

ミステリとして解く、という感じにはなっていないのはミステリ好きとして少し残念ですが、解かれる謎が、単なるいい話、となっていないのがステキです。甘さと苦さがともに味わえる、いい作品だなぁ、と思いました。

「オッソ・イラティをめぐる不和」に出てくるせりふ、「女のお喋りは無駄な話ばかりで」というのは、いろいろな意味で気を付けないといけない言葉ですね。
「割り切れないチョコレート」に出てくる、チョコレート専門店<ノンブル・プルミエ>の詰め合わせのセット数が必ず素数ということに秘められた意図は、なかなかステキですねぇ。商売上それでいいのかわかりませんが...

シリーズはこの後も巻を重ねていますので、読み続けていきたいです。


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