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神様の値段: 戦力外捜査官 [日本の作家 似鳥鶏]

神様の値段: 戦力外捜査官2 (河出文庫)

神様の値段: 戦力外捜査官2 (河出文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/03/06
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
新興宗教団体「宇宙神瞠会」が極秘裏にすすめている“ハルマゲドン”計画。ある日、大学進学のために上京していた妹の未来を訪ねた設楽は、妹が知らぬ間に教団信者になっていたと知り愕然とする。必死の説得も届かず、教団にのめり込む未来。妹を人質にとられた設楽と海月は、最悪の無差別テロを阻止し、未来を救うことができるのか!?


似鳥鶏の「戦力外捜査官 姫デカ・海月千波」 (河出文庫)に続く戦力外捜査官シリーズ第2弾です。
(前作のラストで明かされる越前刑事部長の狙いが113ページでさらっと書かれていますので、前作を読んでおかれる方がいいかもしれません。明かされてしまっても、そんなに問題にはならないと思いますが)
このところ先月(2017年12月)に読んだ本の感想を書いていましたが、ちょっとお休みしてこのシリーズを。手元の記録によれば、読んだのは2015年11月...

新興宗教団体の無法。うーん、今や手垢にまみれた題材ですね。
読者が当然前提とするオウム真理教という現実の存在は、作中でも前提として取り扱われています。
これに似鳥鶏がどう切り込んでいくかというと、探偵の身内の事件とする手法。
これも、まあ、新しさはないですねぇ。もっとも、設楽と海月が所属しているのは警視庁捜査一課火災犯罪捜査二係ですから、宗教団体がらみの事件に関与させるにはこうするのが必要だったのでしょう。
また、事件の性格からして、多少強引な捜査が必要にもなってくるので、この二人はうってつけ、ですね(笑)。

冒頭、一般市民の点景と「二ヶ月後のその日」うんぬんの思わせぶりな文章で幕を開けますが、すぐに海月がやってくれます。
多摩川を流される...頭にカワセミがとまるなんて、さすが。
こういう風に、シリアスな部分と、間抜けな部分が入り混じる作風になじめるかどうかが分かれ道のような作品です。
ぼくは似鳥ファンなので気にしませんが、気になる人にはつらいでしょうねぇ...

さて、事件はさきほど申し上げたように、新興宗教団体、宇宙神瞠会の所業、です。
設楽、海月は、公安部の気安い部員・三浦(編み物が趣味の公安部員...)と早い段階で出会って、協力(?)するようになります。
宗教法人の捜査であれば、必然的に公安と絡みますし、主導権も公安が握るのがふつうだと思われるので、捜査一課の二人が事件に関与し続けるには、公安と結びつきを作る必要があります。フィクションなので無視してもいいようなものですが、この辺の段取り、似鳥鶏はきちんとしています。おちゃらけた部分があっても(多くても?)、きちんと押さえるところは押さえてあるわけです。

捜査小説、警察小説として破格なのは、神瞠会内部の視点も導入されていること。
そしてもう一つ、設楽の妹・未来の視点も導入されていること。
この両者の視点は、なくても物語的には前に進めることができたと思われるのですが(むしろないほうがすっきりします)、作者の意図が掴めていません。
設楽、海月の潜入捜査の様子を読者にわかりやすくするためだけ、とは思えないですしね。

クライマックス近くで、冒頭の一般市民の点景が再び浮かび上がってきてGOOD。
(ただ、インターネットの世界が置いてけぼりだったのは個人的には?? でしたが、それは余談。)

このシリーズは映像化されたこともあってか、順調に巻を重ね、設楽、海月はいろいろな危機にチャレンジしていっているようです。楽しみです。
「ゼロの日に叫ぶ: 戦力外捜査官」 (河出文庫)
「世界が終わる街:戦力外捜査官」 (河出文庫)
「破壊者の翼 戦力外捜査官」(河出書房新社)


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