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ヴァン・ショーをあなたに [日本の作家 近藤史恵]

ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫)

ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
下町のフレンチレストラン、ビストロ・パ・マル。フランスの田舎で修業した変人シェフの三舟さんは、実は客たちの持ち込む不可解な謎をあざやかに解く名探偵。田上家のスキレットはなぜすぐ錆びる? ブイヤベース・ファンの女性客の正体は? ミリアムおばあちゃんが夢のように美味しいヴァン・ショーを作らなくなったわけは? シェフの修業時代も知ることができる魅惑の一冊。


2017年12月に読んだ8冊目の本です。
「タルト・タタンの夢」 (創元推理文庫)(感想へのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾。

常連さんである田上さんが所有するスキレット(分厚い鋳鉄でできたフライパン)が幾度も錆びてしまうのはなぜ? 「錆びないスキレット」
ベジタリアンの客のリクエストに応えるうちに、最近店を出した三舟シェフとともに働いていた南野氏の心持ちが浮かび上がってくる「憂さばらしのピストゥ」
新規開店するパン職人に協力した三舟シェフだったが、肝心のパン職人が開店前に姿を消してしまう「ブーランジュリーのメロンパン」
三舟シェフが気にしている、必ずブイヤベースを注文する女性客新城さんとの顛末を描く「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」
彼女が自分のもとから去って行ったその理由を、かき氷から解き明かす「氷姫」
修業時代(?)の三舟シェフが南仏の小さな町コルド・シュル・シェルで、相席客の恋人との行き違いの謎を解く「天空の泉」
ストラスブールのマルシェ・ド・ノエル(クリスマス・マーケット)で格別のヴァン・ショーを出していたおばあちゃんミリアムが、赤ワインのヴァン・ショーを作らないと決めた理由を解きほぐす「ヴァン・ショーをあなたに」
の7編収録。

前作「タルト・タタンの夢」 ではどの話にも、大詰めのところで(?) シェフ特製のヴァン・ショーが印象的に出てきましたが、今回はなし。
そのかわり最後の表題作「ヴァン・ショーをあなたに」で、三舟シェフのヴァン・ショーに秘められたストーリーが展開されます。

「錆びないスキレット」で猫にエサを与えてしまって志村さんに叱られるシェフがかわいかったり、「憂さばらしのピストゥ」で「料理人にはなんでもできる。前の客の残り物を使うことも、古い材料を使うことも、安いだけで危険な素材を使うこともできる。多少の腕があれば、それを客にわからせないことなんて、簡単だ。だが、だからこそ、それはしてはいけないことなんじゃないか」(67ページ)
とプロの料理人としての矜持を語ったり、「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」では恋(?)したり、「天空の泉」や「ヴァン・ショーをあなたに」で修業時代の姿を披露したり、まさに「三舟シェフの事件簿」と名付けたくなるような短編集になっています。

料理のシーンが素敵なことに加えて、「マドモワゼル・ブイヤベースにご用心」に
「余談だが、一皿をふたりで分けるという注文は、盛り付けの美しさを考えると必然的に、半分より少し多くなってしまう。つまりは、たくさん食べたい人にもうってつけなのである」(117ページ)
なんてトリビア(?)が出てきたり、いろいろんな楽しみ方ができるのもこのシリーズの魅力です。

次作「マカロンはマカロン」 (創元クライム・クラブ)も楽しみです。

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