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鐘 [日本の作家 あ行]


鐘 (幻冬舎文庫)

鐘 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2003/04/01
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
始まりは、深夜不気味に鳴り渡った鐘の音だった――。浅見家の菩提寺にある鐘に付着した血痕、その鐘の模様痕をつけ、隅田川に浮かんだ男の変死体。浅見光彦は、その死に秘められた人間の哀しい愛憎の謎を追い、四国高松へ、そして越中高岡へと向かう。やがて、被害者の美しい妹と共に辿り着いた真実とは? 浅見の推理が冴え渡る、傑作長篇。


内田康夫の本を取り上げるのは初めてだと思います。
内田康夫。言わずと知れた大流行作家です。
初期作は割と読んでいたんです。
「死者の木霊」 (講談社文庫)「本因坊殺人事件」 (幻冬舎文庫)「後鳥羽伝説殺人事件」 (廣済堂文庫)「『萩原朔太郎』の亡霊」 (徳間文庫)……文庫になった順にちゃんと読んでいまして、そのあと「明日香の皇子」 (徳間文庫)くらいまでは全部読んでいました。
ただ、そのうち売れっ子になられ、「地名+殺人事件」という感じの作品をまさに連発されるようになってからすっかり遠ざかるようになっていました。
今年3月に亡くなられ、久しぶりに読んでみようかな、と思った次第。

とはいえ、内田康夫さんにも膨大な著作があり、さてどれを手に取ろうかな、と。
いつも拝見しているコースケさんのブログ「コースケのミステリな日常」の「追悼・内田康夫先生」という記事の中で、
『特に「鐘」のあのトリックは当時強烈な印象だったと記憶しています。』
と書かれていたので、これだっ、と思って購入しました。
「鐘」は文芸四部作の第2作目にあたるらしく、そのほかの3作は
「平城山を越えた女」 (文春文庫)
「箱庭」 (徳間文庫)
「蜃気楼」 (新潮文庫)
のようです。

作者が書かれている「自作解説」によりますと、はじめての新聞小説、とのことです。
内田康夫はあらかじめプロットを作らないで執筆にかかるタイプの作家だ、ということは知っていたのですが、新聞小説だと思って読むと、本当に驚きます。
新聞小説はどんどん読者の興味を引っ張っていかないといけないという宿命(?)を負っていますが、つぎつぎと興味を惹くために盛り上げてしまうと、ミステリですから収束に苦労するはずです。
もちろん連載後単行本にするまでに加筆修正されている(五百枚程度の予定が六百枚をかなり超えて完結したものに、二百枚ばかり加筆・改訂した、とのことです)のですが、そんなことをあまり感じさせないプロットになっています。うーん、それどころか、かなり複雑なプロットになっています。これ、本当に行き当たりばったりで(失礼)書いたんでしょうか? 作家の構想力のすごさが感じられます。

タイトルが「鐘」ですから、作中の「カネ」が「金」ではなく「鐘」なんだろうな、というのはすぐにわかりますが、それにしても、転々とするストーリーが楽しめます。
舞台もあちこちでして(地方新聞数紙に連載されたという事情もあるのでしょうが)、浅見光彦の家のある東京からスタートし、高松、尾道、(富山県)高岡、京都とバラエティに富んでいます。
知らなかったのですが、高岡というのは、鐘の本場、なのですね。

で、気になっていた肝心のトリックですが、確かに強烈でしたねぇ。まさかね。
もともとは地味なトリックだと思うんですよね、かなり。
でもこの作品の場合(ネタバレにつながるのでぼかして書きますが)あれと結びつけますか...あれと結びつけることで、それにも活用するわけですね...大胆。

久しぶりに内田康夫の作品を読むことができてよかったです!
「コースケのミステリな日常」に、『「終幕のない殺人」といった本格ミステリパロディまで』とも書かれていたのが気になっているので、こちらも購入してあります!

<蛇足>
「何かというと反対しケチをつけないと気がすまないらしい。まるで某野党の体質そっくりである」(104ページ)
とあるのには笑ってしまいました。
この場面の視点は一応浅見光彦になっているように思われるのですが、この文は浅見光彦の感想ではなく、作者の地が出てるんでしょうね。神の視点?




nice!(13)  コメント(2) 
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コースケ

31様、こんばんは。
いつも拙ブログへのnice!ありがとうございます。

内田康夫作品を読まれたのですね!
しかも拙ブログを参考にして頂いて・・・
ご期待に沿えているのか非常に心許ないです(汗

中高生の頃に、主に角川文庫で出ていたのを一気読みして以来、
他の文庫にも手を出して・・・現在に至ってます。
「鐘」の後に出た「透明な遺書」、挙げられている「箱庭」
も好きな作品です。

「終幕のない殺人」もお楽しみ頂けたら幸いです。



by コースケ (2018-08-01 21:43) 

31

コースケさん、いつもありがとうございます。
「鐘」、おもしろかったです。
内田康夫作品は、ずいぶん久しぶりでしたが、お蔭様で楽しめました。
「終幕のない殺人」も楽しみです!
by 31 (2018-08-02 04:24) 

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