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あなたに贈るX(キス) [日本の作家 近藤史恵]

あなたに贈るX(キス) (PHP文芸文庫)

あなたに贈るX(キス) (PHP文芸文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/03/09
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
感染から数週間で確実に死に至る病。そのウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。かつては愛情を示すとされたその行為は、国際的に禁じられ、封印されている。しかし、ある全寮制の学園で一人の女生徒が亡くなり、「彼女の死は、“あの病”によるものらしい」と不穏な噂が駆け巡った。真相を探る後輩の美詩が辿り着いた、あまりに甘く残酷な事実とは。鮮烈な印象を残す青春ミステリー。


ソムノスフォビア(唾液感染性睡眠恐怖症)。
2013年11月にはじめて発見されたという設定の架空の病気が蔓延した後の世界を舞台にした作品です。
発症してから早い者で一週間、遅い患者でも二ヶ月以内に死に至る致死率百パーセントの病気。
で、唾液に潜んだウィルスらしきものが病を引き起こし、ウィルスは強い嫌気性を持っているので、飛沫感染はなく、唯一唾液が直接触れ合う、キスにより感染する、と。
そして、このウィルスにはキャリア(ウィルス保持者)が存在し、キャリアは発症しない。キャリアは母子感染の例も多い。キャリアかどうか判定する検査法は見つかっていない。
おもしろい設定ですね。
この病気のお蔭で、キスが違法行為として禁じられた世界。
全寮制の高等学校リセ・アルビュスを舞台にしています。
こういう舞台、映画や小説で多く見かけますが、なかなかいいですよね。
憧れだった先輩織恵が死に、死因がソムノスフォビアだった、と。せっかく仲良くなれたのに...
織恵が残した謎のメール
「真のSeptember、三十一日に会いましょう」
とはどういうことか?
この段階で、実はひょっとして真相はこういうことじゃないかなぁ、という1つの推理(?) ができました。9月31日の謎も見当がつきました(これはわかりやすいですよね)。
そしてその通りでした。(←自慢です)
病気の設定を前提にあれこれ考えたら、いちばんナチュラルに思えたところへ物語は進んでいきます。
ちょっと斜に構えた砂川少年と数学教師竹内(男)との禁断の恋(!?)のエピソードも、無理なく解決にたどり着くためにちゃんと貢献しているところも素晴らしいですね。

「夕映えの向こうに」という短編が収録されていますが、こちらはボーナストラックとでも呼びたくなるようなスピンオフでして、砂川と竹内の物語になっています。

この作品、舞台化されたんですね。
確かに、舞台映えしそう...


<蛇足>
うわっ、これまるで「ニュー・シネマ・パラダイス」 [DVD]だよね、というシーン(102ページ~)があって、楽しくなりました!


<蛇足2>
ずいぶん下劣な内容、かつネタバレになるので、字の色を変えておきます。
この病気ソムノスフォビアですが、唾液に含まれたウィルスにより感染する。強い嫌気性のため飛沫感染はせずキスのみで感染する。
という設定ですが、「唇をふれただけ」のキスだと唾液の出番はあんまりないと思うので(もちろん注意はしなければいけませんが)、いわゆるディープキスが対象ですね。
とすると、この作品のとても印象的な終盤の205ページのシーンでは感染しない可能性が大のような気がします...

この部分を離れて、病気そのものを考えると...(ここからお下劣炸裂です)
感染させる人と感染させられる人を考えると、感染させる人からウィルスを渡すのは唾液が介在としても、感染させられる人は何を通してウィルスを受け取るのでしょうか?
体内に吸収するシステムとしてキスならば直接口の中へ感染させる人の唾液が侵入してきますから感染する=感染させる人の唾液が外気に触れないで感染させられる人の体内に入れば感染するという仕組みだとすると、感染する可能性があるのはキスだけとは限らないと思います。
いわゆるオーラル・セックスの類はすべて感染する可能性が大なのではなかろうか、とそんなことを考えました。とすると性行為すればかなりの確率で感染してしまうんじゃないかなぁ??
作中ではキス以外で発症したことはなさそうに扱われていますから、とすると唾液が口に入ってきたときだけ感染する、ということになります。
考えられるのは、ウィルスは唾液 to 唾液でしか感染しない!!...かなり限定的な感染ですね。
いくら仮定の病気でもちょっと無理がないかなぁ...この作品にずいぶん都合のよい病気ですね。
もっともこんなことは、この作品の価値を微塵も損ないません。ゲスの勝手推量です...(笑)

<蛇足3>
「一生懸命勉強しなければならないのに」(124ページ)
という記述があって、がっかり。
一生懸命は間違いだ、というのはもはや無駄な抵抗なのでしょうねぇ...






タグ:近藤史恵
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