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死者のための音楽 [日本の作家 や行]


死者のための音楽 (角川文庫)

死者のための音楽 (角川文庫)

  • 作者: 山白朝子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2013/11/22
  • メディア: 単行本


<裏表紙あらすじ>
教わってもいない経を唱え、行ったこともない土地を語る幼い息子。逃げ込んだ井戸の底で出会った美しい女。生き物を黄金に変えてしまう廃液をたれ流す工場。仏師に弟子入りした身元不明の少女。人々を食い荒らす巨大な鬼と、村に暮らす姉弟。父を亡くした少女と巨鳥の奇妙な生活。耳の悪い母が魅せられた、死の間際に聞こえてくる美しい音楽。人との絆を描いた、怪しくも切ない7篇を収録。怪談作家、山白朝子が描く愛の物語。


作者山白朝子はいわゆる覆面作家で、東雅夫の解説での正体は伏せられていますが、もう世間ではすっかり知れ渡っていますね。乙一の別名です。
「一切の予断を排して、作品そのものと虚心に向き合ってもらいたいという並々ならぬ思い入れ」(232ページ)から別名義にした、とのことですが、乙一名義でもよかった気がしますけどねぇ。作風、あんまり変わっていませんし。
その点は「百瀬、こっちを向いて。」 (祥伝社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)などの中田永一名義も同様ですね。
もっとも、こちらは名義はどうあれ、乙一の作品が読めれば幸せなので、オッケーです。

「長い旅のはじまり」
「井戸を下りる」
「黄金工場」
「未完の像」
「鬼物語」
「鳥とファフロッキーズ現象について」
「死者のための音楽」
の7編収録の短編集です。
すべて怪談専門誌『幽』に掲載されたものです。

実は最初の2編「長い旅のはじまり」「井戸を下りる」は、なぜか読みづらかったんですね。
おそらく怪談というものと向き合う距離感をこちらが測りかねていたのでしょう(あまり読みつけていませんので)。
「黄金工場」からは極めて快調でした!

彫刻(木彫り)に命を吹き込める少女が仏像を作ろうとする「未完の像」。
「私はこれまでに何人もの人を殺してきた。近いうち捕まって縛り首にされるだろう。その前に自分で仏像を彫って残しておきたいんだ」(97ページ)という冒頭の少女のセリフ、読み返してみるとかなり含蓄深いですねぇ。

「鬼物語」は短い作品なのに、年代記のようになっていてびっくりします。
救いのない結末なのですが、それまでの動と一転して静謐な感じが漂ってきます。

「鳥とファフロッキーズ現象について」は、「未完の像」と並んで好きな作品です。
人ならぬもの(まあ、鳥ですから)、この世ならぬものでも、ちゃんと心が通い、切なさを積もらせる。
もっともいつもの乙一らしい作品といえるかもしれません。
望むものを持ってきてくれる鳥、望むように動いてくれる鳥...
蛇足ですが、この作品の「私」って女性なんですね...途中まで男の子かと思って読んでいました...(あらすじにもきちんと少女と書いてありましたが)
さらに蛇足ですが、SEKAI NO OWARI の「RAIN」の歌詞にファフロッキーズが出てきますね...

最後の表題作「死者のための音楽」も乙一らしい作品でしたが、ちょっと苦手。(念のため、申し上げておくときわめて読みやすいです)
死に際に聞こえる音楽というイメージに圧倒されます。

山白朝子名義の作品は続けて出ているので、これからも楽しめます。

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